15

 慌てて俺はポケットからハンカチなんぞ取り出してサデスの涙を拭う。

「サ、サデス、泣かないでよ」

 はらはらと涙を流すサデスは眼鏡を取るとぐいと自分の服の袖で顔を拭いた。

「イシュアが、君が本当にイシュアなら、僕は…凄く嬉しい…」
「サデス、俺イシュアだよ。今はユリシアでもあるけどイシュアなんだよ」

 俺しか知らないお前の秘密。お前しか知らない俺の秘密。色々あるけど、イシュアだと証明できるものはある。

「イシュアのちんこにほくろあるのとか、俺の太ももの付け根にあざがあるだとか俺たちしか知らないことなんでも言えるよ。サデスが信じるまで」
「あぁ、嘘だろ。君本当にイシュア? そんな馬鹿なこと知ってるのイシュアだけだ」

 泣き笑いしながらサデスは言う。
 そうだよこんな馬鹿なこと言うの俺だけだよ。お前のイシュアだけだよ。

「サデス、信じてくれた?」
「だって信じるしかないよもう。そんなとこのほくろは君しか知らないもの」
「耳の後ろのほくろもね!」

 サデスと抱き合いながら笑い合う。

「あぁ、イシュア。まさかこんなことがあるなんて」
「やっぱ俺が美少年だったから神様が同情してくれたのかも」
「アホ。でも………本当に嬉しいよ」

 俺も本当に嬉しい。
 抱きしめるサデスの体の香りは昔と少し変わって薬品臭い。医者だからしょうがないけど。
 俺だって今じゃあ貴族の美少年、いや美少年は前からだけど。
 お互い少し変わったけどそんなのはどうでも良くて、俺はサデスに告白出来た喜びで舞い上がっていた。


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