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「ねぇショーン、もし母親が君に何も言わなければまだ僕と一緒に居てくれた?」
「………チャーリー、それは……」
泣きそうな顔をして元恋人、チャーリーは俺を見つめる。
「ショーン、僕はこの五年ずっと君のことだけ思っていた。ずっとずっと愛しているんだ。君が、君がいないと僕はまるでダメなんだよ…」
「チャーリー、」
「誰かといても頭の中には君が浮かぶし、息をしようとしても君がいないせいで胸が苦しくて今にも窒息しそうだった」
チャーリーは涙をこぼした。綺麗な白い肌が泣くせいで赤くなっていく。
「新しく恋人を作ってもダメなんだ。君じゃないから」
チャーリーが言う。
俺は、まるで俺みたいだと思った。
この五年、いつも長続きしなかったのは、どんな時もチャーリーが頭にちらつくからだ。ふとした時、チャーリーの顔、しぐさ、声、全てが俺の生活を邪魔した。
チャーリーが俺の全てだったからだ。
俺は口を開いた。
「俺は、お前の母さんに泣かれて、どうすりゃいいのか分からなかった。だって、お前を愛してるから離れるなんて無理だったんだ。だけど、お前は良いとこの坊っちゃんだし、俺なんかより気立て良い嫁さんと、くっつくのが一番かだってお前の母さんに言われて…」
今でもよく覚えている。
──チャーリーには結婚して子供を作って欲しいの、ショーン、ごめんなさい、ごめんなさい、あの子から離れて…。
何歳も年上の人に頭を下げられ俺はなんも言えなかった。
「……お前が幸せになるには、俺と、別れて、女と結婚することが必要だって、それで、それで、俺は、ちょうど仕事が来て」
「ショーン」
「俺といて、不幸になるお前なんか、見たくなかったんだ……」
つられて泣きそうになる俺をショーンが抱き締めた。
愛している人を不幸にする、そんなのは俺にとっちゃ最悪だ。死んでも嫌だった。
「ショーン、じゃあまだ僕を愛してる?」
「…チャーリー」
「ショーン、言ってよ」
チャーリーは泣き笑いしながら俺を見た。
「…愛してる、チャーリー。俺もお前じゃないと息ができないんだ」
この五年間、本当はずっと苦しかった。
チャーリーがいないだけでこんなにも生きていくのが辛いなんて思ってもいなかった。
チャーリーが結婚したのを想像しただけで心臓をわしづかみされたように苦しくなった。
その痛みをごまかそうとひたすら仕事をしていた。おかげでえらくはなったけど、結局苦しいままだった。
「チャーリー、好きだ。もう離れたくない」
「ショーン、ショーン、僕もだ。もう置いていかないで」
俺たちは教会の真ん中で抱き合った。
葬式だとか一目だとかそんなものはどうでも良かった。
愛する人に、また会えたのだから。
end
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