11

 私とレイスの間には小さな光が見え、契約が完了したことが分かる。

「これで私とレイスはもう」

 私がレイスの足にするりと頭を擦りつけた時だった。
 またしても部屋の扉がバタンと開いた。

「意識を取り戻したと聞いたから見舞いに来てやったぞ」

 なんとやってきたのは黒き魔獣だ。

「ミ、ミース! 何しに来たの! 来ちゃだめって言ったでしょ!」

 レイスはあいつの元に駆け寄ると、慌てたようにそう言う。
 私はあの時の事を思いだし、思わず弟と体を寄せ合った。

「なんだ。我は来てはダメなのか」
「そうだよ! この前言ったでしょ!」
「む、貴様が散々言ったから我は来たのだぞ! やっとモノにできると自慢してではないか!」

 ん?
 2人の会話を聞いていたが、何かおかしい。私は弟と顔を見合わせる。

「馬鹿! ミース、黙って!」
「馬鹿だと!? 我は貴様があいつを捕まえたいというから協力してやったというのに!」
「ひぃぃぃぃぃ!」
「貴様に頼まれたから我は嫌々幼い魔獣達に手をかけたのだぞ! 貴様が、幼い魔獣達を助けることで金の魔獣に恩を売りたいというから!」
「いやあぁぁぁ!」
「大体金の魔獣と初めて会った時、後ろで貴様は紙にセリフを書いていたじゃないか! わざわざ我がそこまで協力してやったのに」
「全部いっちゃったぁぁぁぁ」

 レイスは絶叫しながら床を叩く。
 私はそっとやつに近づいた。

「キ、キンラ、歩いたら危ないよ…」
「平気だ。それで、今の話は本当か?」
「え、あ、う…」
「本当なのか?」

 私はレイスを見下ろした。
 やつは青ざめ、ブルブルと震えている。

「ほ、本当でしゅ…」

 えへ、とレイスは引き釣った笑いを溢す。
 私はこんな間抜けに引っ掛かり、頭を下げてしまったのか。

「殺す!」
「いやあぁぁぁごめんなさぁぁぁぁい!」
「待てええ!」

 もちろん、契約は破棄だ。

end



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