10
私はなんとか寝台から下り、レイスに深く頭を下げた。
「この恩、何をしてでも返そう。貴方は我が一族の救世主だ」
「キ、キンラ! 傷が開いちゃうよ!」
「願わくは貴方に支えさせてくれ」
亡き父と母の教えにあった。一族の危機を助けてくれた者にはその身を捧げて恩を返せ、と。私はレイスにこの身を捧げて仕えるのだ。
「に、にいさま! 体に悪いです!」
「そうだよ、キンラ顔を上げてよ」
「貴方が了承するまではこのままだ」
弟が心配そうな声で言うが私は顔を上げない。
レイスのおろおろとする声が聞こえる。
「どうか私の主となっておくれ」
「で、でもぉ…」
「頼む」
私はレイスの足に口付けを落とし懇願した。
上からごくりと唾を飲み込む音がした。
「毎日僕と散歩してくれる?」
「もちろん」
「おてとおすわりも?」
「当たり前だ」
「ブ、ブラッシングも?」
「喜んで」
以前なら嫌がっていた事だが、快諾する。誘拐犯と命の恩人では違うのだ。
「さぁ、私を仕えてくれるか?」
「………うん」
私は顔を上げた。レイスの返事と共に、小さな光が私とレイスを包んだ。契約されたのだ。
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