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いくらか走ったところで周りに何もないことに気付いた。薄暗く一寸先さえよく見えない。
ここはどこだ?
母様! 父様!
振り返って後ろを見るけれど、誰もいない。母様たちを呼んでも返事がない。
誰かいないのか?
私の声が反響して響き渡る。返事はない。
急に心細くなる。もしかして誰もいないのだろうか。
キンラ!
どうしたものか、と頭を悩ませていると誰かが私の名前を呼んだ。
声のする方を見ると白い光が淡く光っている。
キンラ! キンラ!
誰だ?
僕だよ、レイスだよ。
よく見ると、見慣れた手のひらがこちらに向かって差し出されてる。
レイス?
そうだよ、さぁこっちにおいで!
レイスが強く叫んだ。と、同時に私は走り出した。
******
「キンラ!」
強く呼ばれて目を開けると、レイスがいた。
体を起こそうとすると、体に鋭い痛みが走り、また横になる。
「キンラ、キンラ、大丈夫?」
「……体が」
「ミースにやられたんだよ。すぐ、良くなるからね」
レイスの言葉に私は弟たちの事が頭によぎる。
血だらけでいた弟。無事なのだろうか。
「弟、弟たちは生きてるのか…?」
私はレイスの赤い瞳を見つめた。
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