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「──これはお前の家族か?」

 ──後ろから声がした。
 振り替えると、レイスにミースと呼ばれていた黒き魔獣がいた。
 ──口に私の弟を加えて。

「何匹かいたが……全て手応えのない奴らだったな」

 黒き魔獣は弟を、まるで唾を吐くように地面に置くと私を見て、笑いながらそう言った。

「兄に似て大したことのない奴らだ」

 黒き魔獣は全く動かない弟に視線を落とすとふん、と鼻を鳴らした。
 私は弟を見る。三番目の弟だ。甘えたな奴で、いつもキンラ兄さんキンラ兄さんと煩い。だけどどうしたことかぴくりとも動かず、何も喋らない。
 顔を上げて黒き魔獣を見る。奴の口元は血で濡れてどす黒くなっている。
 こいつが弟をやったのだ。
 理解したとたんに、動かなかった体が熱くなる。

「オオオオォォォ!」

 こいつが、こいつが、こいつが、弟を!
 許さない許さない許さない!
 私は奴に襲いかかった。
 首を引きちぎって、バラバラにしてやる! 絶対! 絶対!

「ふん、馬鹿なやつめ」

 ──瞬間、目の前が真っ暗になった。


******


 キンラ…キンラ…

 誰かに呼ばれて振り替えると、亡き父と母がいた。

 父様! 母様!

 私は二人の元に駆け寄る。

 キンラ、さぁ私たちと共に参りましょう。

 母様が言う。私は首を傾げた。

 母様、どこへ行くのです?
 良いところですよ。さぁ。

 微笑む二人に私はそのまま着いて行く。
 と、私は良いことを思い付いた。

 待って下さい。お二人に紹介したいものが! ビーフジャーキーといい、美味なのです。

 私はぜひ母様たちにも食べてもらおうと足を止めた。ずっと紹介したいと思っていたのだ。この機会を逃す手はない。

 まぁキンラ、でも今は急いでいるのです。行きましょう。
 そうだ、キンラ。早く行くぞ。

 母様は残念そうに言う。父様も頷く。

 すぐ、戻りますから!

 私は振り返り、後ろへと走る。

 キンラ、待って! 行かないで!

 母様の声が聞こえた。が、私は止まらなかった。



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