14

 絶対離すもんかと頭をグリグリ押し付けていると、上から大きなため息が聞こえてきた。
 どうしたんだ? 不安だ。

「ペンダントに彫られている言葉は?」

 サデスが言った。俺は顔を上げてサデスを見る。

「ペンダントに文字が彫られているだろ。君がイシュアと言うなら、分かるだろ?」
「う、うんっ! 分かるよ!」

 希望の光が見えてきた。
 俺は頭をブンブン降って頷いた。

「えっとね、確かね、あれはサデスの誕生日プレゼントだったからね……」

 じっとこっちを見つめるサデスにちょっと焦りながら、俺は一生懸命思い出す。
 なんて彫ったっけ?
 誕生日プレゼントだから、確か最初は…

「ハッピーバースデー!」
「ふぅん、続きは?」
「えっ! も、もちろん覚えてるよ!」

 次? 次は、えっと、なんだっけ〜?
 どうしよう。サデスの俺を見る目付きが、どんどん怪しいやつを見る目になってる!
 ひゃー! 思い出せ俺!
 まず、このペンダントを買ったのはどこだったっけ?
 そうだ、兵士になったらもう町には行けないから、徴兵される前に町の店で買ったんだ。


******


『いらっしゃいませー、って、あらイシュアじゃない』
『よっ!』

 同級生の女の家がやっている小さな店だ。ちょうどそいつが店番をしてた。

『何買いに来たの〜? 誰かにプレゼント〜?』
『馬鹿、女じゃねぇよ。サデスに』
『なぁんだぁ。で、どうする?』

 そいつは女宛じゃないと知るとすぐに興味をなくしたようだった。

『このペンダント! 前見てから決めてんだ』
『そう。なら文字は彫る?』
『うん、そうだな。それじゃあハッピーバースデー、って』
『了解』

 俺は前にショーウィンドウで見て気に入っていたペンダントを指差した。
 同級生はメッセージを紙に書くと、早々にペンを置いてしまった。

『おいおい、待て。続きはまだある』
『あん、ごめん。なんて?』
『ハッピーバースデー、君の……』

 俺は慌てて止めて続きを言った。

******


「………君の永遠の友、イシュアからサデスへ」

 そうだ。彫った文字はこれだ。ちょっと恥ずかしかったけどサデスが戦争に行くことが決まっていたから、何か支えになるものを送ろうと思ってたんだ。
 渡す前に俺死んじゃったけど。

「ね、サデス、合ってるでしょ?」
「……あぁ」

 これで信じてくれた? とサデスを見ると、ちょっ! サデスが泣いてるぅぅ!
 ど、ど、どうしたのよ!



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