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 用を足そうと庭へ出て、寝室へ戻ろうとしている時に声をかけられた。

「貴様がキンラか?」
「はて。いかにも。貴方は?」

 真っ黒な艶々とした美しい毛並みの魔獣がそこにいた。私は初めて見たその魔獣に首を傾げた。城にはこんな美しい魔獣がいたのか。

「………レイスのお気に入りというから来てみれば大したことないではないか」
「…なに?」
「毛並みも魔力も我より劣る。つまらんな」

 ふんと鼻を鳴らして馬鹿にする目の前の魔獣に私は怒った。このような侮辱は受けたことがない。この私の毛並みを馬鹿にするなどなんてやつなのだろう。毎日丁寧に磨き上げ、手入れを怠ったことなど一度もない私の美しい毛並みを!
 私はたまらず言い返した。

「ほほう。されど、私の脚の速さや牙の鋭さには美しい貴方でも勝てますまい」
「なに?」
「私の脚は一族の中で一番だ。牙は誰よりも丈夫で何をでも切り裂く。なに、貴方で試してみましょうか?」

 挑発するといとも簡単に黒き魔獣は目を吊り上げた。

「なにを。我は脚の速さも牙も一等だ。貴様よりもずっとだ」
「それはどうでしょうか。言うだけならばどなたにでも可能です」
「ならば確かめよう!」

 低く唸りはじめた黒き魔獣に私も威嚇をする。
 ──お互いにさあ、飛び掛からんという瞬間。

「だめぇぇぇぇ! なにしてるのぉぉ!!」

 レイスが私達の間に飛び込んで来た。

「喧嘩はめっっっでしよ! もぉ〜!」

 レイスは頬を膨らませてプンプン、と怒る。



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