18
ユーシスがニリアを振り切ってたどり着いたのはもう使われていない空き教室。
荒い息を整えようと胸を手で押さえるユーシスの目からは涙がボロボロ溢れている。
「どうしよう……どうしたら……」
ユーシスはそっと視線を下げて胸を覗きこむ。そこにもう紋様はない。
ホッと息を吐くが、ユーシスはすぐに安心してはいられないと気付く。
「うぅ………」
あれはきっと生徒会室でデニスにやられた魔法だ。
ユーシスは袖口で乱暴に涙を拭い、デニスに会う必要があると思った。
ニリアに心配はかけたくない、自分の力で解決しよう、そう決めるユーシスだった。
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「本当に大丈夫なのか?」
「あぁ大丈夫だ……さっきは乱暴してごめんよ」
疑いの眼差しを向けてくるニリアをユーシスはニッコリ笑って誤魔化す。
「それは別にいい。でもユーシス、君瞬きが多いぞ」
「そ、それは目が渇いてるからさ」
隠し事がある時にユーシスは瞬きが多くなる。冷静にニリア指摘されたユーシスは言葉が詰まるがやはり誤魔化す。
「なぁ、なぜ俺に隠すんだ」
「本当にな、なんでもないんだ! 君が心配するようなことはなにも!」
ユーシスはこれ以上ボロがでては不味いと自室へ逃げる。
残されたニリアは悲しげな顔をしていた。
「なぜ俺から離れようとするんだ……」
ユーシスのニリアから頼ってばかりの自分から自立したいという思いとは裏腹に、ニリアは自分からユーシスが離れようとしていると感じ、2人の気持ちはすれ違っていた。
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