15
放課後、ユーシスは生徒会室を訪れる。
今日は活動日ではないのだけれど、ユーシスは生徒会室のキッチンにあるお菓子が目当てでやってきたのである。
鼻歌を歌いながらご機嫌そうなユーシスはキッチンの戸棚を開ける。紅茶缶とケーキを取り出すと、手慣れた手つきでケーキを切り分け皿に盛る。それらをキッチンテーブルに置くと、今度はお湯を沸かし始めた。
「さぁ、あとは」
「ユーシス先輩」
ユーシスが椅子に座ってポットをワクワクしながら見つめていると後ろから声がかかった。
人の気配に全く気が付かなかったユーシスは驚いて、思わず椅子から飛び退いた。
「あ、君か……」
そこに居たのはデニスだった。 ユーシスはほっと息をつき、デニスに向き直る。
「ど、どうしたの? 何か用かい?」
「新聞、読みましたよ、机にいたずら、されたんですね」
「あぁ……うん。そうなんだよ、参っちゃうね」
ユーシスは苦笑いして、デニスを見るが、デニスは何を言うのでもなくユーシスに一歩近づく。ユーシスは何だか気まずく感じ、口を閉じた。
「………あの、デニス君?」
「心当たり、ないんですか?」
「え……」
突然の質問に思わずユーシスは答えられない。
「心当たりっていっても……」
「あるんじゃないですか」
決めつけるかのようにデニスは言う。ユーシスはどこか不気味に感じてデニスから目を反らす。
「先輩、ある、でしょ?」
デニスがまた一歩ユーシスに近づく。
「き、君、なんか変だよ…」
いつもと雰囲気の違うデニスにユーシスはそう言う。しかしデニスはそれを一瞥し、またユーシスの方へと近づく。
デニスは壁までユーシスを追い詰めると、息がかかるほどに近付く。
そしてゆっくりと手を壁に置きユーシスに覆い被さる。
「あ…あ……」
「先輩はこうされるのが怖いんですよね? ちゃんと医者行きました? いつまで経っても治らないんじゃ今みたいに困りますよ」
デニスは笑いながらユーシスを見る。
ユーシスは体が震えてしまうのを手で押さえながら、デニスを睨んだ。
「ど、どいてよ」
「嫌です。……ねぇ、先輩まだ分かりませんか?」
デニスはさらにユーシスに近づく。
「ほら、この顔よく見て下さいよ」
「え……?」
ユーシスは伏せていた目を上げてデニスの顔を見る。
その顔にユーシスは見覚えがある気がした。
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