14
2人は寮部屋へと戻っていた。ショックで動揺するユーシスをニリアは慰める。
「ユーシス、大丈夫か?」
「あぁ……いや、ニリアダメだよ。私は打たれ弱いみたいだ」
「あんなのを見れば誰でもそうさ」
「……誰があんなことを」
ユーシスはニリアの肩に頭を寄せながら呟く。ニリアはユーシスを安心させるように頭を撫でる。
ユーシスは頭を撫でる暖かい手にほっと息をつく。こうしてニリアに撫でられるといつもなぜか安心するのだ。
「有名人って何もしていないのに恨まれることがあるんだよ」
「そうかなぁ。私に何か問題があるのかもしれないよ」
「……まぁな」
ユーシスは出来た生徒会長ではない。その事に不満があるものもいるだろう。
しかもユーキルとアイーヌの三角関係疑惑が起こったばかりだし、恨んでいるものも多いだろう。ニリアはユーシスの言葉に納得する。
「でもあそこまでするなんて随分君は嫌われてるみたいだ」
「………そう言われると悲しいなぁ。まぁ、早く犯人が分かるといいよ」
「そうだな」
幾分か落ち着いたユーシスは、肩を落としてそう言った。
「あぁ私の机ちゃん…」
「そんなに愛着があったのか?」
「一年も一緒に居たんだよ。当たり前だろう」
机のシミや傷、一つ一つ覚えていた。ユーシスは自分の勉強を支えてくれた机の喪失に溜め息をついた。
******
ユーシスの机の事は瞬く間に学園に広まった。
風紀委員長のユーキルが血眼で犯人を探しているらしいが、未だに目星もついていないらしい。
アイーヌは校内新聞でその記事を読む。
「本当に無能な男だねぇ。ねぇ、会長君?」
「え、あぁ、いや。ユーキル先輩は一生懸命やってくれていますよ」
アイーヌの言葉にユーシスはユーキルをフォローするがアイーヌは鼻で笑う。
「僕だったらきっとすぐ特定できるよ」
「でもこれは風紀の仕事ですから」
「ふうん。ま、頼んでくれたらすぐやってあげるよ」
にこりと笑うアイーヌにユーシスは胸がドキリと鳴る。
髪の毛を結んで顔を晒すようになったアイーヌはあまりにも眩しすぎて緊張してしまうことがある。
こうして以前と同じようにお菓子をつまんでいるだけなのに、アイーヌの動作一つ一つに胸が鳴るのだ。
「そ、そういえばこの間新しいお菓子屋が街に出来たとか」
「あぁあそこならもう行ったよ。大したことないからすぐつぶれるよ」
「なぁんだ、それは残念だなぁ。美味しいお店なら行きたかったです」
こうして2人のお菓子談義がまた始まっていった。
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