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講堂はざわざわと、今年度生徒会メンバーの発表を待つ生徒たちの声で包まれている。
そんな中、講堂の奥の席に座っているユーシス=キリクボートは少し青ざめた顔をしていた。
隣に座るニリア=シュンミはユーシスの額に流れる汗をハンカチで頻りに拭い、ユーシスの手を握りしめながら声をかける。
「ユーシス、大丈夫か? 体調が悪いんじゃないか?」
「い、いや。平気さニリア。ちょっと緊張しているだけなんだ」
本当は少し胃が痛んでいたユーシスだが、今講堂を出るわけにはいかない。なにせユーシスはこの時をずっと待ちわびていたのだ。
ユーシスは膝の上の拳を強く握りしめ、壇上の司会者が話し始めるのを待った。
ニリアはそんなユーシスを心配そうに見つめた。
「お静かに」
キィン、とマイクのスイッチが入る音がした。
生徒たちの話し声は消え、講堂は静まりかえる。
壇上にいるかっちりとネクタイをしめた司会者の生徒がカサリと紙を広げる音がマイクから零れる。
「投票の結果、今年度の生徒会、会長は──」
ユーシスはごくり、と唾を呑み込んだ。
「──ユーシス=キリクボート、上級二年生のユーシス=キリクボートに決定しました」
途端、講堂にわあぁ! と生徒たちの歓声が響き渡った。
ユーシスの近くにいる級友たちは「やったな、ユーシス!」とまるで自分のことのように嬉しそうに言った。
「ユーシス! おめでとう!」
ニリアも周りに負けじと大きな声でユーシスに言った。
「ニリア……」
ユーシスはずっと憧れていた生徒会長になれたことに呆然としてしまい、口をポカンと開けながらニリアを見た。
「どうしたんだ、ユーシス! 生徒会長になれたんだ!」
「私が…」
「そうだよ、はははっ! 俺は君に仕えることができて本当に誇らしいよ!」
いつもはクールなニリアが嬉しそうに笑っているのを見て、ユーシスはじわじわと実感が湧いてきた。
「私は会長になったんだ…!」
「そうだよユーシス!」
「あぁ、なんて素晴らしいんだ! あぁ、ニリア! 私はついにやったぞ!」
ユーシスは感動して思わずニリアを抱き締めた。
「あぁ、あぁ、とりあえず壇上で挨拶をしないと! あぁ、ニリア、今日はお祝いだ!」
ユーシスは名残惜し気にニリアを離すと、壇上に向かっていった。
ニリアは笑顔で見送った。
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