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「いや、そんなことは分かってますよ。それで、君、どうしてそんな目にあったのさ?」
「いやぁ、それがねぇ。部長に出されたお茶を飲んだら犬になってしまったのさ」
ユーシスは気まずそうに頬を掻きながらソモルの問いに答える。
ほほう、とアートは興味深そうに頷く。
「あいつは器用だからなぁ。そんな魔法が使えるのか」
「ユーシスをこんな目に合わせるなんて……!」
が、ニリアは今にも噴火寸前の火山のように怒っていた。
「ユーシス。誰が君をそんな目に?」
「黒魔術研究部の部長だけど……。ニリア、気にするな。私はいいんだ」
「だけど…」
「君たちに全裸を見られただけだ。もし廊下で全裸になっていたら大変だった」
ははは、とユーシスは笑う。
「君がそう言うなら…」
「あぁよかった。分かってくれるかい」
しぶしぶニリアは引き下がる。ユーシスは安心した。
「うん、まぁとりあえずユーシス、服を着ようか」
ブレザーで股間を押さえるユーシスにソモルはそう言った。
******
そして数日後。
ユーシスはまた飽きずにミスを連発していた。
「あぁ! まただ! またやってしまった!」
ユーシスの叫びにアートは重いため息をつく。
「今度はなんだ?」
「アート先輩! 薬学部に送るはずが薬物部に!」
半泣きのユーシスにアートはあちゃー、という顔をした。薬物部は麻薬常用者が多数いて、常にトリップしているという危険な部なのだ。
「さっさと取りに………いや、待て。チャンソもついて行け。また犬になられちゃあかなわん」
「はあい」
「すみません! それじゃあソモル、ごめんね」
「ううん、いいよー」
ソモルとユーシスが連れ立って生徒会室を出て、アートは安心のため息をついた。しっかり者のソモルがいれば安全だと思ったのだ。
「真面目で仕事熱心なんだけどな……」
ユーシスのことを思い浮かべそう呟く。
新しい後輩はとても真面目でやる気に満ちてはいるが、いかんせん仕事ができない。
アートはどうしたものか、と頭を悩ませた。
序章End
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