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ミト=シャリスは優雅に休日の午後を過ごしていた。寮にあるテラスで部下の親衛隊員にお茶を汲ませながら、お菓子をつまむ。ミトが親衛隊副隊長になってから休日はいつもこうして過ごしていた。
今日は日頃隠し撮りしたニリアの写真をアルバムに納め、そして溜めていた校内新聞を読んでいた。
そしてミトはある記事に眉を潜めた。
「デニス=マハラが書記に就任? なにこれ」
「シャリス様、ご存知ないですか? 先日生徒会が書記を募集して、デニス君に決まったんですよ。デニス君は下級生の中で人気で成績も良く素行に問題もないし、書記にぴったりの逸材ですから」
「あいつが?」
隊員の言葉をミトは鼻で笑った。まるでデニスの事を知っているかのようなミトの口振りに、隊員はミトとデニスは知り合いなのか、と訪ねる。
「そんなわけないでしょ。あんなやつと関わりたくなんかないね。マハラはね、ヤバいよ。僕なんかよりももっと頭イっちゃってるから」
ミトは頭をトントンと人差し指で叩きながらそう言った。
そんな話し聞いたことありません、と隊員は、ミトの言葉がにわかに信じがたく驚いた。
「でもあいつが生徒会に入ったんだから時期にすぐ何か起こるさ。そしたら君も僕の言ったことが良く分かると思うよ?」
ニヤリと笑うミトに隊員は悪寒を感じた。
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「ユーシス、お帰り」
「ただいま!」
ニリアは帰ってきたユーシスを笑顔で出迎えた。しかしユーシスから嗅いだ事のないコロンの匂いがして、ニリアの笑顔は僅かに曇った。
「遅かったね。どうしてた?」
「あぁ、実はユーキル先輩と少しお茶をしていたんだよ。ちょっと話す機会が会ってね」
「あぁ………あの創立祭の」
創立祭の事を思い出したニリアはげんなりとした。あの時ニリアは大変だったのだ。あの場にいたユーシスの兄マリスに「お前がいながらなんであんな虫がつくんだ! この使えない愚図め!」と散々罵られ、挙げ句に「お前なんかクビだ!」と言われたのだ。クビは免れたが、ニリアは思い出すだけで今でも身の毛のよだつ思いだった。
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