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結局話し合いの結果、書記はデニスに決定した。
ユーシスはそれを生徒達に伝えるため近日開く全校集会の資料を集めるため資料室を訪れていた。 そして風紀委員長のユーキルもまた、集会の資料集めのため資料室に向かっていた。
「えっと、これは…どこかな?」
ユーシスが一人資料を探して、沢山ある棚を見ているとガラリと扉が開いた。ユーシスがその音に振り向くとそこにはユーシスを見て目を丸くしたユーキルがいた。
ユーシスは内心、気まずいなぁと思ったが、資料を探す手を止めユーキルの元へと駆け寄った。
「マライシス先輩、お久しぶりです。偶然ですね」
「あ、あぁ。ちょっと今度の集会の資料をな…」
自分より背の遥かに高いユーキルにちょっと恐怖しながらもユーシスは笑顔で話す。ユーキルが悪い人ではないことは分かっているのだ。だけどやっぱり背の高い人は苦手だし、恐怖は拭えそうにない。
一方ユーキルもまた恐怖していた。自分がユーシスに好意を抱いていることを知られているのだ。それも最悪な告白で。内心、ユーシスに気味悪がられていないだろうか、とひやひやしていた。以前だったら「ユーたんだ! ラッキー!」などと小躍りしていたはずが随分臆病になっていた。
「あぁ、私も集会の資料を集めていたところです。新しい書記を発表する大切な集会ですから、いつもより念入りに資料集めしているんです」
「そうか……」
だけど相変わらずはにかむような笑顔を向けてくれるユーシスに、ユーキルはあの時のことを話すなら今しかない! と思った。ユーキルは学園祭のもやもやを残したままでいたくないのだ。
「あ、それじゃあ私は──」
「ユーた、じゃない、ユーシス君!」
「は、はい!」
「あ、その……学園祭の時はすまなかった。…俺があぁ言ったことで結果的に君に迷惑がかかってしまった。新聞に随分嫌な記事が書かれたし、親衛隊にも色々言われただろう」
「あ、いえ…そんな、新聞とかのこと私は気にしていません。むしろ私が言ったことでマライシス先輩を傷つけてしまったのではないかと…」
「いや俺は気にしていない。……あ、まぁミシホには腹が立ったが、君に告白したことは一切後悔などしていないよ。結果がどうあれね」
ユーキルは資料室を出ようとするユーシスの腕を掴み引き留めた。
一瞬体が強ばるユーシスだが、じっとユーシスの目を見つめながら言うユーキルに、強ばりはするすると溶けていく。
(なんて誠実な人なんだ…)
ユーシスはユーキルの言葉に感動し、そう思った。もしソモルがこの場にいれば「なんて簡単な奴なんだ!」と叫んでいただろう。
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