41
あまりにアイーヌが悲しげな声で言うのでユーシスは彼を泣かしてしまった、と酷く焦った。
焦ったユーシスはアイーヌの頬を両手で包むと、くいっと自分の方へと向かせた。
「アイーヌ先輩、私は貴方の事嫌いになんて………………」
喋りながらユーシスは顔を覆っているアイーヌの髪を横に流して、あまりのことに驚愕した。
アイーヌの黒い髪の下にはとても美しい顔があったからだ。
驚いたユーシスが口をパクパクさせていると、アイーヌが不安げにユーシスを見上げた。
「会長君……?」
「あ、あ、う、あばばば!!」
「え、ど、どうしたの?」
「う、美しい! なんて美しいんだ!」
言葉にならない声を上げたユーシスはアイーヌの顔をがしっと掴み、ぐいっと己の顔を近づけひたすらアイーヌを見つめて称賛した。
「シルクのような白く滑らかで美しい肌、ルビーのような光輝く瞳、あ、貴方一体……」
誰ですか、と言おうとしてユーシスは目の前の麗人がアイーヌだということをハッと思い出した。
正気に戻ったユーシスはぽっと頬を染め、アイーヌの顔から手を離した。
「あ、やだ、私ったら……失礼しました」
「あ、うん」
凄い形相で己を見てきたユーシスに恐怖を抱かないでもないアイーヌだがユーシスの謝罪に頷いた。
「あ、その、話しが反れましたが私がアイーヌ先輩を嫌いになるなんてないですから」
「…………そっか良かった」
「………えっと、それであの、」
ユーシスの言葉にほっとするアイーヌ。だが、ちらちらと顔を見てくるユーシスにああ、と苦笑した。
[*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]