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誰もいない静かな階段下。声がよく響き、二人は自然と小声で話す。はたから見るとまるで囁きあっているようでもあった。
「あの、私、新聞を読んで、それで…」
「ああ! あれね、ふふ。笑っちゃうよね、僕が二股かけてるとか」
ユーシスは、アイーヌがきっと新聞の内容のせいで傷ついているか怒っていると思っていた。
だが、予想に反してアイーヌはからからとおかしそうに笑っていた。そんなアイーヌに少し驚きながらもユーシスは言葉を繋いでいく。
「新聞を読んで私、酷いと思ったんです。だってあんな事実無根で、それに、まるで…あ、アイーヌ先輩を悪人みたいに…」
「……まああながち嘘じゃないかもね」
「で、でも私は、貴方が本当は素敵な人だと知っています! だ、だから新聞部に抗議したいと思ったんです」
ユーシスがそう告げるとアイーヌは目を丸くした。
「抗議? いいよ、そんなの」
「友人にもそう言われました。逆にアイーヌ先輩に迷惑がかかる、と」
「そう」
「で、でももし先輩が抗議して欲しいなら私はいつでも新聞部に行きます」
「…別に気にしてないから平気」
ユーシスが自分のためを思い一生懸命話す姿に、アイーヌはふっと顔を綻ばせた。
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