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「アイーヌ先輩! 来てくれたんですね!」
「うん、会長君。メッセージ、読んだよ」

 ずい、とニリアを押し退けてアイーヌはユーシスに近付いた。アイーヌがユーシスへ向ける笑顔は、ニリアへのそれとは全く違った。だが、アイーヌの後ろにいたニリアにはその事には気付かなかった。ニリアはむしろ、ユーシスのキラキラとした笑顔に気をとらえていた。その笑顔は今朝、ニリアに向けた笑顔とは全く違うものだった。

「ねぇ、ちょっと話しがしたいんだけど」
「はい! ニリア、少し出てきてもいいかな?」

 行くな、とニリアは言いたかった。だけれどキラキラの笑顔に見つめられ、この笑顔は
アイーヌが作り出したんだと思った瞬間口から出たのは了承の言葉だった。

「……ああ、気をつけて」

 閉まる扉を見てニリアはなんだか泣きそうになった。

******


 アイーヌとユーシスは人気の少ない階段下にいた。

「あの、私、アイーヌ先輩に…その…」
「うん、僕も君に話したいことがあるんだ」
「えっあ、そうなんですか。あ、ではお先に…」
「いや、君の話しを先に聞きたいな」

 いつもと違い嫌に静かに話すアイーヌにそう言われて、では、とユーシスは言葉を選びながらゆっくりと話しはじめた。



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