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  ──ユーシスとニリアはお互い部屋にいたが、今朝の事のせいか、いつものように会話ができず気まずくなっていた。
 ユーシスはニリアから自立したいと思い、ニリアはユーシスと離れたくないと強く願っている。お互いの思いがうまく噛み合わず、仲の良いはずの二人の間には重い空気が流れていた。

「わ、私お茶淹れるよ!」
「ユーシス、お茶なら俺が」
「ううん! 私がやるから」

 ハッと思い付いたようにユーシスは立ち上がり、台所に立つ。名案だとばかりにニコニコしながら茶葉を取り出した。
 しかしユーシスが今までやらなかった事をやりはじめて、ニリアは苛立ちを感じた。何故急に自分を避けるかのように身の回りの事をやりだしたのか、ニリアは分からなかった。

「ユーシス。何なんだ、急に。今までそんなことしなかったじゃないか」
「わ、私だってたまにはお茶ぐらい淹れるさ」
「……お茶だけじゃない。夕食だって急に自分で準備しようとするし…。何がしたい?」
「た、ただ私は自分の事は自分で…」
「何故だ? 今まで通りでいいじゃないか。今まで通り、俺が君の世話をみれば何の問題もないだろう? 俺は君の執事だぞ。なんのためにいると思っている。君の世話をみるのが俺の役目だ」

 低い声で訪ねるニリアに威圧され、戸惑いながらユーシスはおずおずと答える。たがユーシスの答えに、ニリアはいっそう苛立った。

「わ、私は……」

 なんと言えばいいのだろうか、と言葉を選ぶユーシスだが、部屋のベルが鳴らされた事によって中断された。

「あ、お客さんが…」
「俺が出る」

 出ようとするユーシスを止め、玄関へとニリアは向かう。すでに夕食も終えて消灯時間も近づいている中、やって来る客。ニリアは大方検討がついた。



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