33
生徒会室で仕事を終えてユーシスは寮の自室に戻る。ユーシスは新聞部への抗議を散々悩んだ結果やめてしまった。決め手はソモルに「ユーシスが抗議したらまた騒がれて、君の大好きな先輩に迷惑がかかるんじゃない?」と言われたためだ。
しかし、かえってユーシスは何もできないもどかしさに苛々としていた。
「ただいま」
「ニリア!」
「わっ! どうした?」
ユーシスはニリアに抱きついた。ニリアは驚きながらも嬉しそうにニコニコと笑顔でユーシスを抱きしめ返す。
「……新聞読んだ?」
「あぁ、そのことか」
途端、ニリアは眉を潜めてユーシスの体を離す。
「読んだよ。新聞部のでっち上げだったね」
「そ、そうなんだ。だから私抗議しようと思ったんだけどソモルに止められて…」
「そうだろうね」
ユーシスは突然、態度が硬化したニリアに戸惑いを感じた。いつもならニリアはユーシスの言葉に笑顔で優しく答えてくれる。しかし、今のニリアは不機嫌そうで笑顔もなかった。
「あの、それでね、私、アイーヌ先輩に…」
「ユーシス。その話しは置いといて食事にしよう」
「う、うん。でも……」
「なに?」
「……なんでもない。食事にしよっか。」
アイーヌのために何かできることがあるならば、何よりも早くしたいと思ったユーシス。だが、目の前の幼なじみの異様な雰囲気に食事を優先にした。
******
食事が終わってユーシスは風呂に入るとさっさと寝てしまった。ニリアはこっそりユーシスのプライベートルームに入り、ユーシスの寝顔を見る。
「ユーシス…」
ユーシスを起こさないように小さな声でニリアはそっと呟く。ユーシスの白く柔らかな頬を指先で撫でながら、ニリアはユーシスの思いで胸がきゅっと痛くなるのを感じた。
(あんな、あんなやつになんか獲られてたまるか…!)
今ユーシスの頭の中をほとんど占めているだろうアイーヌに、ニリアはめらめらと嫉妬の炎を燃やしていた。
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