32

『痴情の縺れ!? 三角関係が巻き起こすステージの嵐! 我らの王子生徒会会長ユーシス=キリクボートと風紀委員長ユーキル=マライシス、そして悪魔の申し子、黒魔術研究部部長アイーヌ=ミシホ達が創立祭中に大喧嘩! ステージ上で三人は口論をした。とある情報によると、アイーヌ=ミシホが二股をかけていたことが発覚し、大激論に発展したらしい。観客は皆騒然、最後は生徒会長が舞台からは去って行った。また――』

 ユーシスはその内容の酷さに、思わず新聞をぐしゃっとまるめてしまった。

「酷い記事だ…」
「なにこれちょっと笑える」
「…ソモル」
「ごめん」

 創立祭から数日後。新聞部がこの記事を書いたことによって、学園はユーシス達の話題で持ち切りだった。新聞の内容は事実とは全く違うものだったが信じるものが多かった。もちろん、その時にステージの観客席にいたものたちはその記事が間違っていることに気づいてはいるのたが記事の内容を否定するものをいなかった。
 というのもアイーヌが嫌われものだからだ。観客席にいたもの達はうすうすアイーヌが原因だと分かった。そして大半がユーシスとユーキルのファンクラブの人間だったため、皆アイーヌに憎悪を向けた。だから、アイーヌを酷評する記事の内容を否定することもしなかった。

「アイーヌさんは、先輩はこんな記事に書かれているような人じゃない」
「君達が三角関係とか本当笑える」
「……ひどいでっちあげだよ」
「そりゃ、僕は観客席にいたから知ってるさ」
「…私は新聞部に抗議する」
「やめときなよ、本当のこと言ったって彼が嫌われ者なのは変わらないし。まぁ、君達がホモカップルっていうのは否定しといてもいいんじゃない?」

 ユーシスはアイーヌの事を思い胸を痛めた。きっとこんな記事を書かれたら彼は傷ついているだろう、そう思った。
 ソモルは記事が面白いようで、何度も読んではけらけらと笑っていた。

「ははは! あーおかしい。今期の新聞部長はセンスあるね」
「おかしくなんかないよ…」
「だってさ、こんな話し生徒達が食いつかないわけがないじゃん? うまいとこ分かっててこんな記事書いたんだよ」
「……ソモルって意地が悪い」
「は? 僕は心優しいでしょ」

 ねぇ、そうでしょ? ねぇ? と聞いてくるソモルをユーシスは無視し、ふぅ、と重いため息をついた。



[*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -