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「あ、あ……」
「先輩、あの…」
顔面蒼白、茫然自失になるユーキルにユーシスは困ってしまう。アイーヌは己の作戦通りに行った喜びでニヤニヤとしていた。
観客からはユーキルのファンやユーシスのファン、両方からバッシングが飛ぶ。ユーキル様の告白を断るなんて生意気! やらユーシス様に告白するなんて身の程知らず! やら沢山の生徒が文句を言う。マリスも特別席からユーキルへのバッシングをしていた。
一際大きな声で誰かが「なんとか言えよ!」と言うと、ユーキルはハッと意識が戻った。
「ミ、ミ、ミシホ! 貴様謀ったな!」
マイクを持ってニヤニヤとしているアイーヌを指差しユーキルをそう言う。アイーヌはユーキルがまさか舞台上で自分に追求をしてくるとは思っていず、あたふたした。ユーシスの前で話されたらばれてしまう。そしたらユーシスとはもう、友達ではいられなくなってしまうと思ったからだ。
「や、やぁだ、何を言うの? やめてよ」
「き、貴様のせいで俺は!」
「ちょっと、ちょっと! やめて、落ち着いてよ! ほら、皆見てるし!」
大慌てでアイーヌはユーキルをなだめようとするが、ユーキルの怒りは止まらなかった。
「お前が告白しろと言ったから俺はしたんだ!」
「うわあぁ! ちょっと声がでかい! やめて!」
「仲直りがしたいだとかも嘘だな! 貴様は俺に恥をかかすために告白させたんだな!」
「ああぁぁ! やーめーて! ちょっと黙ろう! ね! 悪かったから!」
「俺の事が嫌いだからって、会長を使って俺をおびき寄せるなんて卑怯だぞ貴様!」
ユーキルのその言葉に、ユーシスがぴくりと反応した。
「わ、私を使ってって?」
ユーシスはなんのことか分からず、眉を八の字にしてアイーヌに声をかけた。
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