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そして創立祭当日。
ユーシスを含め生徒会メンバーはやることが多く、皆あくせく働いている。
ユーシスは入場口にて券を配っていた。すると、一人の青年がユーシスに近づく。
「僕の天使ちゃん、元気かい?」
「やぁ、マリス兄さん!来てくれたの?」
頬にキスをしたマリスにキスを送り返すと、ユーシスは滅多に会えない兄に会えた喜びで飛びつくようにマリスに抱きついた。儚気な美しい青年の登場に周りの生徒達はほう、とマリスに見惚れる。
マリス=キリクボートはユーシスの兄であり、華奢な体に女性と見間違うような綺麗な顔をしていた。
「なにせ、ユーシスが会長になったと聞いたからね。僕も生徒会に入っていたから懐かしいよ」
「兄さんはここの卒業生だものね。あぁ、それにしても会えて嬉しいよ!もちろん私に案内させてくれるね?」
「はは、そのために来たものさ」
ユーシスはマリスを案内するために校舎へと向かって行った。
マリスたちがいなくなった途端、生徒達はざわざわと騒ぎ出す。
「い、今のお方は!? 誰!? 誰なの!」
「ユーシス様のお兄様…?」
「……惚れた」
「あぁ、僕目眩が…!」
興奮して叫び始める生徒達。その一方、近くで事を見ていたソモルとニリア。
「ユーシスのお兄さん相変わらず綺麗だね。あはは、皆凄い騒いでる」
「あぁ」
「君は会う機会が多いんだろう?マリスさんってどんな方なわけ?」
「どんな?」
「綺麗で成績優秀、家柄も良く人望もある。学園在学中は光の君と呼ばれ、生徒会書記を務める。だけど友人は数少なく、彼の性格を知るものは少ない…。で、どうなの?ぶっちゃけ性格悪いとかないの?」
「……マリス様は」
この時ニリアは考えた。
ソモルに本当のことを伝えるか嘘を言うか。つまり、マリスは極度のブラコン&ヤキモチ妬きでユーシスと常日頃居られるニリアには冷たくいつもちみちみ嫌がらせをしてくる、ということを教えるか、とっても良い人だよ!という嘘を教えるか…
答えはすぐに出た。
「とっても良い人だよ!」
「そう。ユーシスも良いやつだものね。やっぱり兄弟って似るのかねー」
もしソモルから情報が漏れてマリスの耳に入れば俺は間違いなく消される、そう思ったニリアは嘘をつくことに決めた。
だがニリアはどこか悪寒がし、ソモルと別れてその場を立ち去り己の仕事へと戻った。
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