もう一人の執事と幼い私2
しかしいくら待ってもその日にマリスが帰ってくることはなかった。
ユーシスはショックで次の日は一日中泣き腫らした。
「に、にいしゃまァっか、がえってくりゅっていっちゃのにい゛!!」
「ゆ、ユーシス様」
「うしょついちゃ゛〜〜!」
えぐえぐ、と顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら話すユーシスにキショウはどうしよう、と戸惑う。
「にいしゃま、のすぎな、ゲーキも、ようい゛したのにぃ゛!」
「……ユーシス様」
「たのしみにしてちゃのにぃ……」
キショウはユーシスの隣に座り、ユーシスの背中を優しく撫でた。
ユーシスはキショウにひし、と抱き着く。
「楽しみにしておられたんですよね」
「……うん」
「マリス様に会えなくて悲しいのですよね」
「……そうなの。にいしゃまに会いたかったの」
「でも、それはきっとマリス様も同じですよ。マリス様もユーシス様に会いたかったはずです。だからきっと今頃マリス様も泣いて悲しんでますよ」
「…にいさまが?」
キョトン、としてユーシスはキショウを見つめる。
ユーシスは兄の泣いている姿が想像できなかった。
「えぇ。ああ見えてマリス様はとっても淋しがり屋なのです。そしてユーシス様の事をとても大事に思っていらっしゃいます。だからユーシス様のそんな顔を見たらきっとびっくりしてしまいますよ。笑顔のユーシス様を見たいはずです」
「…分かった。わたしもう泣かない」
キショウの言葉にユーシスは涙を引っ込めた。
ユーシスは持っているハンカチーフで顔の涙を拭うと、キショウに向かってニッと笑いかける。
「キショウ、どう? 私の顔? もう泣いてない?」
「……えぇ。とっても素敵ですよ」
キショウはユーシスの頬をそっと撫でた。
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