もう一人の執事と幼い私1
7つ年上の兄は私が物心ついたころはいつも忙しくしていて家にいることが少なかった。
「ニリア、兄さんは何処にいるんだっけ?」
「確か南の島へ行ったらしい。相変わらず忙しい人だな」
「そうだね……。兄さんは昔から忙しそうにしてたなぁ」
幼い頃の私は兄に遊んでほしくてたまらなかった。いつも週末に兄が帰ってくるのを心待ちにしていた。
その頃はニリアの兄キショウが私の身の回りの世話をしていてくれて、よく彼に構ってもらっていた。ニリアはまだ執事見習いとして勉強中で、私の完全な執事にはなっておらず四六時中隣にはいられなかった。ニリアが私の執事と決定したのは、確か10歳の時でそれからはキショウは私の担当を外れ、ニリアが身の回りを世話を全てしてくれた。
ニリアがずっと一緒に傍にいる事が嬉しかったと同時にキショウと離れる悲しさも感じた。
キショウが荷物支度するのを見て号泣する私を兄さんが慰めてくれたっけ。
「あれはいくつの時だったかな…」
「? 何の話しだ?」
「うん、確か兄さんが私との約束を守られなかった事があってね……。キショウが代わりに遊んでくれたんだ」
「キショウ兄さんが?」
*********
「キショウ、おにいさまはまだ?」
「えぇ、まだ帰られておりません」
「……忘れちゃったのかなぁ。遊んでくれるって約束してくれたのに…」
大きな目に涙をためる幼いユーシスにキショウは優しく笑いかけて頭を撫でる。
「忘れるわけがありませんよ。マリス様は今日の事をとても楽しみにしておられましたもの」
「……ほんとう?」
「えぇ。それはそれは嬉しそうに私に話してくれましたよ。“今後ユーシスと博物館に行くんだ”と」
「…そっかぁ! ありがとうキショウ!」
ユーシスはキショウの言葉にたちまち笑顔になり、ギュッとキショウに抱きついた。
そんなユーシスにキショウも、おやおやと言いつつ笑顔だった。
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