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「ごめーん、お茶がちょっと見つからなくてぇ」
適当に言い訳をしながらアイーヌはお盆に乗せたケーキとお茶をテーブルに置く。
「いえ。…あっ! このケーキひょっとして…」
「あ、分かるぅ? 今、首都で話題のミラクルケーキ!」
「わぁ! どうやって手に入れたんですか? 予約して半年待ちとか聞きましたけど」
「んふふ、実は知り合いがあそこでパティシエをやっててね」
すごーい!とユーシスはキラキラと尊敬の眼でアイーヌを見た。
「じゃあ、さっそく食べようかぁ」
「はい!いただきまーす」
あ、美味しい!と二人は一気にケーキを平らげてしまった。
********
「じゃあ、また来週ね」
「はい! 楽しみです」
ひらひらと手を振ってアイーヌはユーシスを見送る。
「ふぅ…」
アイーヌはほっと息をついた。
ニリアへの対応は冷静にやったつもりだが、アイーヌは少し不安があった。
創立祭の事を少し喋ってしまったから、ニリアは何かユーシスに聞いてしまうかもしれない。それだけは避けたい。
この数週間、ユーシスと接してアイーヌは幸福を感じていた。捻くれ者のアイーヌは友達ができた事などなく、実質ユーシスが初めての友達だった。
最初はユーシスを駒として見ていたアイーヌだったが、だんだんとユーシスを好きになりはじめたのだ。
だがそれをニリアはよしとしないだろう。だからニリアを見つけた時、平然と振る舞おうとアイーヌは懸命に努めた。
(知られちゃだめだ・・・!)
初めての友達をアイーヌは失いたくなかった。
アイーヌは創立祭でのユーキルへの嫌がらせにユーシスを使う事にツキン、と胸が痛んだ。それと同時にそのことをユーシスに知られるわけにはいかない、と強く思った。
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