16

 アイーヌはポケットからニリアを出し机に置いたまま、お茶の準備を始めた。大体用意が出来たところでパン、と手を叩きニリアの方を見た。

「ほら、呪文解いたから動きなよ」

 自由に動けるようになったので、ニリアは変化の術を解いた。
 ぽふん、と小さな音を立て元に戻ったニリアはアイーヌと向かい合う。

「あ〜。やっぱり君かぁ」
「…一体どういうおつもりですか」

 鼠の正体にアイーヌは驚かなかった。
 ニリアはアイーヌを強く睨む。

「別に悪い事なんて考えてないよぉ。ほら、会長君って良い人だからさ、真逆の僕はちょっと惹かれるところがあるっていうかあ」
「貴方の行動は怪し過ぎる。ユーシスに危害を加えるつもりなら、」
「やだやだ! そんなつもりなんかないってばぁ」

 信用してよ、とアイーヌは相変わらず読めない顔で笑う。
 ニリアはどこか気味悪いものを感じて、ゾッとした。

「ほらほら、それだよ。それ。普通の人は皆、今の君みたいな顔をするんだよね。でもさぁ、会長君ってそういうのないから新鮮でさ。あの子ってちょっと変わってるよね」
「どんな理由が在るにせよ、不審な行動は控えていただきたい」
「ん、ん、大丈夫! 会長君には創立祭の時にちょっと手伝ってもらうだけで、後はもう何もしなくていいから!」
「…は?」

 創立祭? とニリアはアイーヌに聞き返した。アイーヌはあっやべ、と小さく呟いたがすぐになんでもないなんでもない!と言ってごまかした。

「ほらあんまりお茶が遅いと会長君が怪しむから帰って! 君、転送術使えるでしょ?」
「くれぐれも頼みますよ…」

 渋々、という感じでニリアは帰って行った。アイーヌはお茶とケーキを持ってユーシスのいる部屋へと向かった。



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