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一方アイーヌは事がすんなりうまくいきほくそ笑んでいた。
たかがユーキルへの嫌がらせのためにユーシスを使うのは少し心が痛む気もするが、嫌がらせが成功したときの達成感を考えると心躍るため仕方ない。
アイーヌはユーシスが人に頼られると断らないことに、出会ってから数日で気付いた。
一般生徒に頼まれたら、写真を一緒に撮ったり、頬にキスをしたり、とサービス旺盛だ。さすがに過度な要求には答えないが、基本頼まれた事は実行する。
教師の頼みだって断らない。ポイント稼ぎというわけでもなく、本当に人に頼られるのが嬉しいようだった。
そんなユーシスの優しいところにアイーヌは付け込んで、色々と“お願い”をしてゆっくりとユーシスに取り入っていった。
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「あれ? ユーシスまたか?」
「う、うん、ちょっと出掛けてくるね」
こそこそとユーシスが部屋を出て行こうとしていたところ、ニリアが声をかけユーシスはびくっと肩が動いた。あはは、と笑って誤魔化しつつそうっと扉を閉めた。
怪訝な顔でニリアは見送った。
ニリアは最近ユーシスの外出が多いことを怪しんでいた。
ユーシスの護衛であるため着いていくべきだが、ユーシスにそう申し出ると断られてしまった。
友達のところに行くだけだから、と。
しかしその友達が誰かは教えてくれず、ニリアはもやもやしている。
(よし…!)
尾行しよう、とニリアは決めた。
変化の魔法を使い姿を小さな鼠に変え、さらに尾行がばれないようにと気配を消した。
気配を消すことは魔法では中々難しくできるものは少ない。ニリアもまだ習得できていなかった。
しかし幼い頃から護衛として育てられているニリアには、体術として気配を消すことができた。
気配の薄い鼠となったニリアはこっそりとユーシスの後を着いて行った。
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