13
アイーヌとユーキルの喧嘩が終わり、会議室はほっとした雰囲気に包まれた。
「で、では黒魔術研究部は出し物の内容を変更するということでいいですね?」
喧嘩の発端、出し物の変更について司会者は確認を取る。
「うん。あとさぁ、ステージ使いたいなぁ」
「えっと…ああまだ空きがあるので平気ですね」
「わぁ、よかったぁ」
全く嬉しくなさそうなトーンでいうアイーヌ。ユーキルはまた怒りそうになったが、先程アートに言われた事を思い出しやめた。
「では創立祭当日の事についてですが――」
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「会長君」
会議が終わり、皆が部屋からバラバラと出始めていた。アイーヌはユーシスに近づきポン、と肩を叩いた。
「さっきはどうも。変更を許可してくれて助かったよー」
「えっいや、そんな、私は何も…」
アイーヌに役に立ったと言われ、ユーシスは嬉しく思いつつもなんだか気恥ずかしく顔が熱くなった。
「あのねぇ、それでひとつお願いしたいことがあるんだけど…会長君にしかできないことなんだぁ」
「はいっ! なんでしょう?」
アイーヌはそんなユーシスを見てうふふと笑いながら、怪しい手つきでユーシスの肩を撫でた。
“会長君にしかできないこと”この言葉がユーシスをはい、と言わせた。自分にしかできないこととはなんだろう、とユーシスは期待で胸がわくわくした。
「創立祭当日のことなんだけどさ…」
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ユーシスはアイーヌに頼み事されたことが嬉しかった。というのもそもそもユーシスは人に頼み事されることが少ない。
一般の生徒達は「ユーシス様に頼むなんてそんな恐れ多いことできません…!」と言ってしないし、仲の良い生徒達はユーシスがドジでマヌケな事を知ってるので頼み事はしない。
だから、人に頼られるということを全然体験したことのないユーシスには、アイーヌの言葉は甘いお菓子のようにユーシスを引き寄せた。
(創立祭が楽しみだ…!)
アイーヌに頼まれた事を早くしたくてユーシスはうずうずした。
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