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「妄想? ふざけるな。俺の言っていることは事実だ。お前は何か企んでいる」
「確かにいつお前を殺してやろうかといつも考えてるよ。だけど創立祭の事は君に話すつもりはない。いちいち報告することでもないしね」
確信を持って話すユーキルにアイーヌは不機嫌そうにそっぽを向いた。
「話すつもりはない? 俺をなんだと思っている。風紀委員長だぞ。創立祭に参加するとはどういうつもりなんだ。言え」
「君は僕のお母さんにでもなったつもり? そうだな……しいていえばただのイメチェンではないってことだけかな。もういい? 僕は君と違って忙しいんだよ」
アイーヌはユーキルにうんざりし、廊下の窓に足をかけるとそのまま外に飛び逃亡した、
「…おいっ! 待て! ミシホ! 話しはまだ終わってないぞ!」
ユーキルは窓から身を乗り出しそう叫んだが、すでにそこにアイーヌの姿はなかった。
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窓から逃げ出したアイーヌ。部室に行けばきっとユーキルが待ち構えているだろうと、学園の屋根へと逃げた。
アイーヌが得意な飛行術を使えばこんなもの朝飯前だ。
「ふぅ…」
アイーヌはため息をつく。
ユーキルとアイーヌは中等部の頃からずっと仲が悪かった。
根暗で不気味なアイーヌと活発で曲がった事が嫌いなユーキル。全く二人は合わなかった。
そもそもアイーヌは最初からユーキルのことが嫌いだった。だから近付かないようにしていたのに、正義感たっぷりのユーキルがクラスのつまはじき者に話しかけてきたものだから仕方ない。
アイーヌがユーキルに対してぞんざいな態度が怒ってしまったのだ。
アイーヌもそんなユーキルに対して腹が立ったため黒魔術を使って悪戯したのがいけなかった。
それ以来二人は犬猿の仲になった。ユーキルは黒魔術とアイーヌを敵視しているし、アイーヌもユーキルにしょっちゅう嫌がらせするようになった。
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