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校舎に向かう途中ユーシスとニリアは食堂に向かう。朝食を取るのだ。
「ニリア、あそこにしようか」
「あぁ」
ユーシスの指した先にある席に二人は座る。朝日がちょうど良く当たるとても良い席だ。
二人はテーブルに置いてある鈴を鳴らす。
「ご注文は?」
すると手の平ほどの大きさの可愛らしい人形がやってきてそう尋ねる。この人形は魔術によって操られており、ウェイターとして食堂にて働いている。
「えっと…じゃ」
「じゃあシェフのおまかせセットを三つお願いね」
注文をしようとするユーシスを遮って誰かが注文を入れた。
ニリアとユーシスがメニューから顔をあげると、いつぞやのだみ声の男がいた。
いつのまにかユーシスの隣に座っている。
「おはよう、会長君にシュンミ君。アイーヌ=ミシホだよ。黒魔術研究部の部長なのは知ってるよね」
「…いきなりなんですか」
にやにやと笑いながら言うアイーヌに眉を潜めながらニリアが尋ねる。
アイーヌの出現に心なしか日当たりの良いはずの席に陰りが出来た気がニリアはした。
「いやぁもうすぐ創立祭があるじゃない? うちの部はいつもは参加しないんだけど、今年はうちの研究部も倶楽部参加しようかなって思ってさ」
「あぁ、それは良いことですね!」
「でしょう?」
犬にされた事など忘れたのか笑顔で頷くユーシス。
「それでね、君に書類のこととかおねがいしたいなぁって」
「あぁ、いいですよ。放課後お届けしますね!」
「そうしてくれると助かるな、ありがとう会長君」
胡散臭い笑みを浮かべながらアイーヌはユーシスにお礼を言う。
ニリアは怪訝な顔で二人のやり取りを見つめる。
「今年は参加倶楽部が少なくて困っていたところだったんです。こちらも助かります。でもなぜ今年は参加するんですか?」
「いやぁ黒魔術研究部ってどうも敬遠されているみたいだからさぁ、イメージを変えようと思って。イメチェンだよ。イメチェン。創立祭でアピールするんだよ。黒魔術研究部は怪しくないですよ〜って」
ニヤニヤと笑いながらアイーヌは言う。
アイーヌの言葉に、部をどうにかするよりも己の風貌をどうにかしたほうがいいのではないか、とニリアは思った。
それもそのはずアイーヌはいかにも怪しいやつという感じなのだ。
長い髪で覆われた顔に真っ黒な法衣、唯一見える口元は常にニヤついている。
こんなアイーヌが部長では敬遠されないはずがない。
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