5
「ん、これは……」
アートは中を見て驚いた。中に入っていたのはユーシスが取りに行ったはずの書類だったからだ。
「あ、先輩メモが…」
ソモルはヒラヒラと封筒から落ちたメモ用紙を拾ってこれまた驚いた。
メモには「間抜けな子犬ちゃんは書類を無事届けられた? 魔法が解けたらきっと大騒ぎだね」と書かれていた。
「これはどういう意味?」
ソモルはそれを読み上げてニリアとアートを見るが、二人もさっぱり分からないのか首を傾げる。と、ニリアの腕にいた子犬がキャイン! と叫んで暴れ出した。
「うわ、こらっ」
慌ててニリアは手を離してしまった。と、犬はべちょっと間抜けに着地した。
ユーシスが子犬になって一時間が経過しようとしていたのだ。
慌てて犬─つまりユーシス─がどこかに隠れしようとしたが時すでに遅し。
ボフン、と大きな音を立て、ユーシスは犬から人間へと戻った。
「は、はは……どうも」
ただし、全裸だった。服は黒魔術研究部の部室に置きっぱなしだ。
「ユ、ユ、ユ、ユーシス!」
最初に叫んだのはニリアだった。眉を吊り上げてツカツカとユーシスの元へやってくる。
「な、ど、ど、どし…!」
顔を真っ赤にし言葉にならない声をあげながら自分のブレザーをユーシスに渡す。
ユーシスは悪いなぁ、と思いつつもそれで股間を隠した。
「………ユーシス。君、犬だったの」
「チャンソ、そんなわけないだろう。入学時にきちんと生体検査されているから、キリクボートは人間だ」
ソモルの呟きをアートは冷静に否定する。
[*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]