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 え、とユーシスが疑問に思う間もなく今度は男が大声で笑い出した。

「アーッハッハッハッ! 馬鹿なやつ!」

 男はユーシスに指を指して嘲笑った。

「わふん!」
「なぁんの疑いもなく飲んでやんの!」
「わふっわふっ!」

 ひぃひぃ、と苦しそうに笑う男に、ユーシスは抗議の声を上げるがどんなに文句をいっても喉から出てくるのは情けない鳴き声である。

「うぷ、鏡見る? ほぅら、子犬ちゃん」
「キャン!」

 男は曇って汚れている鏡をユーシスの前においた。汚い鏡には、制服の中に座る耳の垂れた子犬がいた。

「さ、これが書類だよ。くわえてきな」
「………わん」
「うふ、一時間くらいで元に戻るからね」

 書類を口元に持ってこられ、ユーシスはパクとくわえる。

「またおいでね、間抜けな会長君?」

 ヒラヒラと手を降りながら男は言った。



*****



「随分遅いな…」

 アートは時計を見つめ、心配そうに言った。ソモルもうなずき、不安そうな顔を浮かべる。

「失礼します」

 そんな時、ニリアが子犬を抱いて生徒会室にやってきた。

「ユーシスを見かけませんでした? 夕食の約束をしているのだけど見当たらなくて」
「彼仕事に行ったきり返ってこないんだ。ニリア君、その犬は?」

 ニリアの問いにソモルは首を横に降った。そして犬のことを聞くと、ニリアはあぁと気付いて封筒を取り出した。

「何やら生徒会室の扉を必死にカリカリ掻いていたもんですから、中に入りたいのかなぁって。あと、こんな封筒をくわえていて」

 ニリアは封筒をアートに渡した。ニリアが子犬の頭を掻くと、子犬は気持ち良さそうにくぅんと鳴いた。




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