水シリーズ_冷たい雨
病弱主人公。とても短い。
灰色の雲から落ちてくる水。
外を歩く人はみな、色とりどりの傘をさしていた。
隣で雨を降らす雲のようにどんよりとした空気を纏う蘭丸ににこりと微笑む。
「私、雨の日は好きよ。嫌な気持ちを洗い流してくれるもの。」
彼は何も答えてくれない。
それでも構わず続ける。
「音を聴いているのも好き。自然と、優しく心に入り込む感じがするの。まるで貴方の歌みたい。」
俯いてしまった彼の手に触れると、両手で包み込んでくれた。
「今日が雨でよかった。貴方もいるもの、さみしくないわ」
枕に頭を沈め、真っ白な天井を見つめる。
この白も、今日で見納め…
苦しい副作用とも、さようなら。
けれどそれは彼ともお別れになるということで……
「どうしてだろう、
嬉しいはずなのに、とても悲しいの
もう少し…貴方といたかった」
にっこり微笑むと、彼は何か言っていた。
けれど、何も聞こえなかった。
好きよ…
言葉が出なかったけど、気持ちは伝わったはず…
私は手から伝わる優しい温もりと、ぽたぽたと降り注ぐ雨を感じながらそっと目を閉じた。
2014年作品
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