雨恋日和

名前変換なし。一話しか書いていないものでしたがもったいない精神でログにあげました。




静まり返る教室。
それは教師に叱られたからではなくみな真実を受け入れられないからである。

「今日からジェノックに配属された元ロシウス第六小隊と、」
「元、ロシウス第五小隊です。領土の縮小化に伴いそれぞれ他国に配属されここに来ました。よろしく!」


それぞれの隊長である法条ムラクと東雲イオリがそう言うと、教室が一気にざわついた。
無理もないことではある。今までライバルとして戦ってきた上にジェノック第一小隊の隊長出雲ハルキはムラクに仲間をロストさせられた経験があるからだ。元第五小隊も約一名ロシウスを弱体化させた大きな原因がジェノックであると恨んでいる者もおり、まさかこの二つの小隊がこのクラスに来てしまうとは思ってもいなかったからだ。

ざわざわとする教室。第一小隊の一員瀬名アラタと同じく第一小隊のメカニック、細野サクヤ、そして第七小隊の梶本アキラはちらりと心配そうにハルキを見る。

視線を受けたかどうかは定かではないが、がたりと音を立てて席を立つハルキ。
こつり、こつりと静かに元第六小隊と元第五小隊がいる教卓の前まで進んでいく。
ムラクの前に立ったハルキは無表情。それに警戒し元第六小隊のバネッサとミハイルが自分達の隊長を守るためにと庇うように立ちはだかる。

しかし、
「歓迎する」

「優秀な小隊達が加わるのは心強い。よろしく」

そう言って握手を求めるハルキ。

「こちらこそ、よろしく頼む」

ムラクはそういうと手袋を外し握手に答えた。

「ぼくたち第八小隊も全力でジェノックとして戦うからさ!みんなよろしくねー!」
「よぉーっし!今日は8人のジェノック配属を記念して歓迎パーティだー!」

嬉しそうに手を振るイオリ。教室の全員、微笑みを浮かべていた。
そんな和らいだ空気の中、不服そうな表情を浮かべている人ももちろんいたのだが…。







寮の食堂を貸切行われた歓迎会…しかしジェノック第三小隊の鹿島ユノが寮長に伝え忘れてしまったことによって少々問題が起きてしまったらしい…

「ごめんね…歓迎会のこと、寮長のトメさんに言うこと忘れちゃって…」
「まぁいいだろ?これでもみんなでシルバークレジット出し合ったんだぜ?」

「なっ!?…僕たちのためにシルバークレジットを…!」
「なんか申し訳ないじゃねーか…」
「あんたにそういう気持ちがあるのに驚きだわ…でもその気持ちわからなくもないわね」
「仲間だもん当たり前だよ、ね!」

驚いた様子のミハイルと申し訳なさそうな様子の第八小隊のプレイヤー兎森アルトと同じく第八小隊メカニックシア・トゥルクに、第五小隊の波野リンコが微笑んで優しい言葉をかけサクヤに同意を求めると、彼もうん、と頷いた。

「こんだけご馳走してあげるんだから、ウォータイムでもちゃんと働いてよね!」
皮肉めいた言い方ではあるが、第三小隊隊長のキャサリン・ルースも歓迎しているようだった。


「おまえら…」
感動した様子のバネッサとミハイル、そしてアルト、シア…ニコニコとするイオリと静かに微笑むムラク…。
それぞれ寛大なジェノックに溶け込むことができたようだった。

そして始まる歓迎パーティ。お互いの親睦を深め合う最高の機会となった。


だが…

「俺のLBXに勝ったからっていい気になりやがって…!!」

「私は認めませんよ。あなたが仲間だとは。」

「なにが…仲間よ……」


現実を受け入れられない人たちの怒りも頂点に達する機会ともなってしまった。



「リリア、」
「…なに……」

第八小隊羽水リリアの前に飲み物を置くとミハイルがポンと頭をなでた。

「皆優しい人だよ、気持ちはわかるけどこのままじゃやっていけない」
「……ひどい吐き気がするから部屋に戻る…」

席を立とうとするリリア。そこで今までジェノックに所属してから一言も話さなかったリリアが話しているのに注目され視線が集まる。

「な、なん…ですか。見ないでください…。
…どうせあなたたちは第六小隊みたいな強い小隊を望んでいて、私みたいな弱い者がお荷物だって思っているのでしょう!?
お前みたいな人間がいるからロシウスは勢力が弱まったって心の隅でわらってるんですよね、わかってますよ!わたしだってこんな国でお仲間ごっこしていたくないんです、ロシウスを守っていたかったんです!この制服を身に纏いあなたたちと同じ場所で息をしているだけでひどい吐き気がします…!ジェノックなんて…私のほうから願い下げです……!」
「リリア…!」

ダッと走りだそうとするリリア。しかしその手をシアが掴む
パァンっ…

乾いた音が食堂に響く。

「あんた、被害妄想も大概にしなさいよ。こんなパーティ開いてもらってまでそういうひねくれたこと言ってんの?」
「…だって……」
「あんたが弱かったからロシウスから追い出された?ええ、そうでしょうね、リリアは愛国心が強いだけで全然役立たずだったわ。」

ズバズバと言うシアを止めようとあわあわとするイオリとミハイル。

「…あんた怖いんじゃないの?今まで命令を破ってジェノックを潰そうとしてきたことがばれるのが。」

その一言で食堂内がざわつく。

「し、シア…それは…」
「プレイヤーの戦いや行動をこと細かく見るのがメカニックよ。ばれているのには気づいていたんじゃないの?」

「……そうですよ…私はジェノックと戦うときにはロストするように狙ってたし、拠点に爆弾を仕掛けたりしてきた…」
「リリア…!」
「でも…どうしても本気が出せなかった…どうしても、爆発させるためのスイッチも押せなかった………バンデットが出てきてから余計に…。私にはないものを、ジェノックは持っているんですもん…きっとバンデットを倒してくれると、思ったから…。馬鹿な話ですよね、ジェノックに配属されたことによってクラスメイトに軽蔑されるのが怖かったんです。これによって第六小隊も同じ小隊の仲間も離れて行ってしまうとおもったので…。…笑ってください」










2013年




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