−−−君には何か素質を感じるんだ、それにこの国に来たのも何かの縁だろう。食客としてアリババ君たちと共にいればいい。ジャーファルもその方が嬉しいんじゃないのか?
どうせ、行くあてもないから確かにそうさせていただきたいけれど。…でもいいのだろうか。ここで私ができる精一杯のことをさせてもらえるならそんなに嬉しいことはないが…
ふぅ、そっと吐き出した息に私の手を引いて隣を歩いていた過去の仲間、ジャーファルさんが突然申し訳ありません。といってきた。
それはこちらの台詞なのに…突然現れて、すぐに答えが出せなくて。そんな私にゆっくり考えてこればいいと部屋まで用意してくれた。私はそんな優しいこの国の人たちにお礼をしたい。しかし私がここにいて何の役に立てるのだろうか。
何も見えなければ、料理もできないし、筆を持つことも武器を持つこともできない。
何も見えなければ、私には償いも何もできないではないか…どうして生きているのだろう。どうして私は視力を失ったままこの世界に立っていられているのだろうか。
「名前、」
「なんですか?」
呼ばれたと思ったらぴたり立ち止まられ驚いて遅れて自分も立ち止まる。
「貴女が今何を考えているのか少しだけわかりますよ。この国に、暗殺をしてきた自分がいてはいけないのではないか…いても何もできないだろう、など…いろいろ思っていることがあるのではないですか?」
「…そうですね、」
思っていることを言い当てられてしまいうなずくしかできなかった。いっそ命を絶とうかなんて考えてもいるがこの国の人がそのようなことをさせてくれるとは思えない。
「今は確かに何も見えないかもしれませんが、そのうち、”何かが見えてくるようになる”かもしれませんよ?」
「何かが…見えてくるように…」
目の前は真っ暗で、流されるように歩いていて。立ち止まって道を探して。
ジャーファルさんの言いたい意味はすぐに理解できた。私は今は見えないこの道をまっすぐに歩いていけば、いつかきっと何かが見えてくるようになるかもしれない。私のできること、私のやるべきこと、私が今、ここにいる意味を、見つけることができるようになるかもしれない。
この出会いはきっと、何かの導き…
真っ暗だった世界に、ふと何かがよぎる。久々に見る光…
「鳥…?」
「え?」
そっと手を伸ばすと避けられてしまうが、沢山の鳥のような形の光が私を囲むように飛び回っていた。そしてジャーファルさんの周りにも飛んでいるようにも見える。
これはもしかすると、
「私、早速少しだけ道が見えるようになったかもしれません」
「え?」
一人でまっすぐ歩けなかった道が…
「この子達が、私の歩むべき道を標してくれているんです。」
「あなた、まさか!」
「はい、どうやらルフが見えるようになったみたいです。」
私には、もしかしたら自分もまだ知らない力が眠っているのかもしれない…
[目覚めた才能]
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