三人に連れられて、王様のいる場所にきた。三人いわく、面白くて優しい人だと聞いているが、その人は私の生い立ちを聞いたらどう反応するのだろうか、ぐっと気を引き締める。
「シンドバッドさん、連れてきましたよ!」
シンドバッド。その名に眩暈を覚えた。シンドバッドなんて一人しかいないだろう。
あの有名な七海の覇王…私は恐ろしい国に来てしまったのだと痛いくらいに実感した。
しかしそんな場所で思わぬ出会いが待ち受けていた。
「名前…ですか?」
誰だろう。やわらかい男の人の声。コツコツと近付いてくる足音。
「名前ですよね?」
なぜ私の名を知っているのだろうか。私は知らないその人に、後ずさりをしてしまう。
こんなにも親しげに話しかけてくる人に覚えがない。
「覚えてませんか?…まあ、昔のことでしたしね…」
切なそうにそう言われ、なんだか申し訳なさがこみ上げてくる。頑張って思い出そうとするがなかなか出てこない。仕方がないのでごめんなさい、そう正直に謝った。顔を見ることができたらわかったかもしれないがそれが叶わないから、なんて不便なのだろうと改めて感じた。
「ジャーファル、知り合いか?」
「ええ、昔の友人です。」
友人ということは暗殺者の仲間だった人…?そうなると心当たりは一人しかいない。もしかして、わたしが長い間心の隅に置いていたあの少年?少しだけ期待が芽生え始める。
「あの、目が見えないのでこれは予測になってしまうのですが、」
その前置きに目の前の人がピクリとしたような気がしたが、かまわず続けた。
「あなたは幼いころ銀色の髪で顔に包帯を巻いていましたか?」
「思い出して、くれましたか?」
思い出すも何も、そんな笑みがこぼれる。
「お久しぶりですね。」
「そうですね…」
生きていた。彼は、生きていたのだ。私は喜びから抱きつきたくなったが、彼がどこにいるのかはっきりわからないため、ぐっと気持ちを抑え込む。そんな二人の再会を見ていた王様、シンドバッド王は、私に声を掛けてきた。
「で、君はどうして此処に?」
「私は…」
早速そのことに触れてくるあたりやはり気の抜けない相手だ。
「私は、任務の遂行中に怪我をしてしまいこの国に捨てられたようです。」
「なるほど。…少し、ゆっくり話そうか。」
モルジアナたちに席を外させ、別の部屋に移った。その場には王様とマスルールさん、そして、あのときの友人の四人だけになった。
私はこの怪我を負った理由や生い立ちを、少しずつ話していった。
私は先日ある大富豪の家族を暗殺するため、それなりに貧富の差がある、とある町へ訪れていた。その大富豪を暗殺しろとなぜ命令が出たかは知らない。親の顔も知らぬまま幼いころからとりあえず言われたとおりにただただ罪悪感を感じながら殺しを続けていたから、理由なんて寧ろ知りたく無かったのだ。
その家を目指し暗い夜道を仲間と歩いていると、突然大富豪家族が雇ったと思われる人たちに襲われた。なぜかこちらの動きが筒抜けだったらしい。それもかなり強く太刀打ちできぬままに引き上げた。私はそのときの襲撃の際に目、腕、脚を怪我し、毒か何かのショックで気を失ってしまったようだった。そして、気がついたらこの国、シンドリアにいた。おそらく、使えなさそうな人は適当に捨てられたのだと思う。と、憶測なども含め話をし、今までの行いについての償いをしたいと思っていることも、全て話した。
静かに聞いていたシンドバッド王は口を開く。
ならば、この国にいればいい!
・・・・・。
「え?」
「え!?」
声色と声量が違えど、まったく同じ台詞が私と友人とで重なった。
[出会い]
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