超怖い編集者と〆切に追われる漫画家_1
午前三時四十四分。あと一時間で恐怖の四時四十四分でもある。そんな折に、まだ閃かない。
まだネタが閃かない。
ネームも切れてない。ヤバい。
そもそも、アシスタントもいない状況がヤバい。
いや、そもそも私、人に指図するのが苦手だし。それなら一人でやりますってフクマさんにいっちゃったのが間違いだし。いや、下手にペン入れやベタ塗られて当初の予定と完成が違ったら、ねぇ?
……泣きたい。
頭を抱えて途方に暮れていると、突然雷が鳴った。
「な、なに!?」
誰もいない部屋で、振り返る。
窓の外は土砂降り、突然の悪天候。なぜ、なぜだ!? しかし突然の事態に対する驚きでか、インスピレーションは止まらない。
ネタを切る手は止まらない。
「ど、どうして……。天気予報では、晴れだといってたのに!!」
そうだ、ラジオを垂れ流した段階では、翌朝まで天気は崩れないといった! なのにどうして台風が来たみたいに荒れるのか!?
「もしや、これがあの……!?」
止まらないネタ。混濁する思考。そして止まらないネーム。さっさとラフで描いてサッと仕上げる。
どうしよう、どうしよう、止まらない、止まらない! ならばここをこうして次はこうするためにこうフラグを組み立てて、ならばここに匂わせて!!
はぁはぁと鼻息を荒くしていると、ギシリ……ギシリ……。となにかを引き摺る音が聞こえる。
「もしや、ドラゴンの蹄……? 竜? いや尻尾……? それより」
それをどう使うか。と考えてると、ガチャっとドアノブが回った音がした。
「サスペンス、いやミステリー? いやいや、今は前の話からしてそうで」
「ななし先生、ネームの方は終わりましたか?」
「あっ」
ネタが全て吹っ飛んだ。