セロリ二号と半田桃_1

『リハビリも中々順調に進んでいる』
 と、かかりつけの医者にいわれた。
 正直この医者の活舌がわからないので、最初は「純情に進んでいる」と誤解した。なんか人生ゲームか恋愛ゲームとかで順調に進んでいるのだろうか、とも誤解してしまった。
『もしかしたら、外に出れる日も近いかもね』
 ともいわれた。
 けど、正直、病院で過ごしている時間が長い私にとって、外の世界で居場所なんてあるのだろうか。
 どうせ一人きりに決まっている。ならば、さっさと死んだ方がマシなのではないだろうか。
 と思ったら、いた。
 それを邪魔するヤツがいた。
 私を『セロリ二号』だなんて呼ぶヤツがいた。
「よう、セロリ二号! 今日も元気か!?」
「まぁまぁ元気です」
 とだけ返しておいた。
 なんでか最近、ここに立ち寄ることが多い。それも決まって、私が病院の外を散歩しているときだ。
 どうやらご機嫌がいいのらしく、「今日はロナルドの奴が」「ロナルドの奴が」「ロナルドの奴が驚いたぞ!」なんて一方的に喋っている。
 それに対して私は「はぁ」とか「はぁ」とか「はぁ」しか返せない。
 今まで、看護師と医者にしか会話という会話をしなかったのだ。
 まともな社交辞令や雑談の期待だなんて、しないでほしい。
「で、セロリ二号! 貴様は、次のロナルドをギャフンといわせる大作戦に、なにか良い案はないか!?」
「はぁ、そうですね。せめて差し入れと称してタンブラーの中にセロリジュースを入れたらいいんじゃありませんか?」
「それだ!」
 なぜ私の出まかせにいった案を採用するのかも、わからない。


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