小心者とくたびれOLさん_1

 自分でいうのも恥ずかしいが、結構わが社は忙しい。
 なんていったって、社員一人に対して割り振る仕事量が有りえないのだ。
 一人につき営業の電話、事務の仕事、企画の資料作りに段取り打ち合わせ、それに雑多な細かい仕事と来る。
 正直、この過密なスケジュールと一人当たりに過度な責任の負担によって、辞める人も数知れず、だ。
 それなのにどうして辞めないのかというと、単にお金がないからである。
 そして単純に、目の前の彼の優しさに絆されて、また明日も頑張ろう、と思ってしまうからである。
「今日もお疲れ様。どうかな、お口に合う?」
「うん、合う。とても合う。すごくおいしい……。ありがとう、いつも……。いつもありがとう……」
「やっ、そ、そんな何度もいわなくても!! 正直、頑張ってるだけでも偉いと思うし、たまにはちゃんと休んだ方がいいよ?」
「うっ。サテツくん、優しい……。とても優しい……。頑張れる……。明日も頑張れる……。頑張る……」
「そんな自分を無理に追い込まなくてもいいからね!? 本当に!!」
 そうビックリして叫ぶけど、私にとっては本当に救世主なのだ。
 手作りのカレーを一口一口食べ、明日のお昼に持っていこうと思う。
「作りすぎちゃったけど、大丈夫かな?」
「うん、大丈夫」
 尋ねる彼に、そう返す。パクパクと一口頬張れば、やっぱり彼の優しさが口の中に広がる。
「うぅ、おいしい……」
「そう何度もいわなくても……。照れちゃうな」
 いやいや、そう謙遜しなくても。既に態度でテレテレと出てますではないか。と思いつつも、また一口頬張る。おいしい……。
 彼は専業主夫さながら、私の脱いだ服を洗濯機に入れたり洗い物をしたりと、甲斐甲斐しく世話をしてくれている。
 あぁ、一層のこと、結婚してくれればいいのに……。
「え!?」
 私は口に出していたのだろうか。
 サテツくんは私に目を見開いたまま、ボッと顔を赤くしていた。
 わっ、まるで毛が逆立ってるみたい! きゃっきゃっ。
 そう子どもに戻ったあと、顔を赤くしたまま拗ねる彼を見送って寝た。


<< top >>
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -