イケてるおじさん?(30年後のドラルク)

 塾の帰り道、知らないおじさんと出会った。なんかイケてるおじさんだ。中年の色気を匂わせており、後ろで髪を一つ結びにしている。
「女の子が一人で、こんな遅くまで出歩いちゃいけないよ」とおじさんはいう。けど受験が近いのだ。こんなところで休んではいられない。「そうですか」と返せば「そうだよ」とおじさんは返した。そうですか、とまた返して足早に去ろうとしたら、おじさんの胸元がモゾモゾと動く。それに気になって足を止めれば、ニュッとアルマジロが顔を出した。
「ヌー」
 かわいい。
 突然のことに驚いていると、おじさんはニヤリと笑った。
「なんだい? もしかして触りたいのかい?」
 いや、それ誰もいってないけど。
「でも残念ながら非売品なんだよね。ふふーん」
 なんで得意げに笑ったの? そうツッコみたいけど、アルマジロの方はそうでないのらしい。ガーンッ! と漫画みたいな効果音が出るみたいに顔を真っ青にしたあと、泣きながらおじさんの胸を叩いた。「ヌヌヌン!」怒ってる姿も可愛らしい。そう思ってたら小動物の視線が急に低くなり、灰の中に立った。
 ん?
 あっという間におじさんはなくなった。
(いったいどうしたんだろう)
 もしかして、アルマジロを置いて帰ってしまったんだろうか?
「薄情な人だね。とりあえず、交番に持って行けばいいのかな?」
「ヌ? ヌヌヌヌン!」
「え?」
「プハッ! ちょっ、待ちたまえ! 私はここにいるよ!?」
「ウギャア!!」
 自分でも情けない声が出た。それに驚いてる間もなく、爪先に違和感を感じる。ブニュ、と柔らかくてそれでいて固いような……。試しに爪先の方を見れば、なんかおじさんの顔が見えた方から蹴った先に向かって、灰が流れていた。
(もしかして?)
「ギャア、痛い! まったく、少しは限度ってものをしらないのかい!?」
(あ、やっぱり)
 おじさんはこの辺りで聞いたことのある『すぐ死んでしまう吸血鬼』であるらしかった。
(あの都市伝説は、噂じゃなかったのか)
 実物を目の当たりにしてしまい、驚いてしまう。そんなことをしているから受験勉強の内容も忘れてしまい、帰ったその日に復習をやることになってしまった。


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