いっぱい食べるきみが好き(サテツ)

 サテツくんの大好物は肉まんなんじゃないかな? ってくらい、彼はよく食べている。肉まんを。買った肉まんを一つ掴み、齧る。ついさっきまで蒸しあがったばかりだからか、とても熱々で、ホクホクしている。皮も、萎んでいない。サテツくんも、同じように食べる。そういえば、ロナルドくん辺りからも「アイツ、滅茶苦茶燃費悪ぃから」とか聞いたっけ。「この前一緒に海行ったときさ、アイツ、運転してたんだけど。その時俺らの分の肉まんも平らげたんだぜ? 有りえなくないか!?」となんだか驚いていたようにいってたっけ。その時、私はその場にいないからわかんないけど。
 肉まんがなくなる。ので、もう一つ肉まんを食べる。サテツくんも、続けて肉まんを食べる。
(なんで)
 と疑問が浮かび、ふと思い切って尋ねた。
「ね、サテツくん」
「ん? な、なに?」
「それ、すごく食べるよね。なんで?」
 普通の疑問として尋ねたら、きょどったサテツくんは一瞬にしてポカンとなった。
 首を傾げて、逆に聞き返してきた。
「えっ、そんなに食べてるかな?」
「うん。食べてる、食べてる」
「そうかなぁ」
 こちらが返したことに対しても、半信半疑だ。
 サテツくんはまた肉まんを食べる。彼は男性だからか、いつも私より食べるのが速い。負けずに、私も肉まんを平らげる。そしてまた一つ、新しく肉まんを取ろうとしたら、もうない。
「あれ?」
「ん?」
「もう、ない……」
「えっ!? もしかして、今ので最後だった……?」
「うん、そうみたい」
 適当にわかる事実を返せば、サテツくんは真っ白になっていた。まるで、今まで見たことがないくらい絶望的な顔だ。あんぐりと口を開けているサテツくんに、なにもいえない。やがてジッと見ていると、サテツくんがあわあわとしだした。
 自分の食べた肉まんを見て、視線を左右に揺らす。そして顔を真っ赤にしてギュッと目を閉じたあと、意を決したように、パカッと肉まんを割った。
「ご、ごめん……。えっと、その、やっ! 気持ち悪いよね!? ごめんね、ごめんね!?」
「うぅん、別に気持ち悪くないよ。そうじゃなくて、ありがとうね。いただきます」
 勝手に一人で慌てる彼の手から割った肉まんを奪い、一口齧る。うん、美味しい。
 モグモグと好意に甘えて片割れを食べていると、「え」と声が聞こえる。サテツくんだ。視線をやれば、少し呆気に取られたように──いや、文字通りポカンとしたまま?──私の方を見ていた。
 サテツくんの手には、自分で齧った肉まん。私の手には、割ったばかりでまだ手の付けられていない肉まん。それの、いったいどこが変だというのだ。間接ちゅーじゃあるまいし。
 そう思って肉まんを平らげれば、声にならないような声をあげて、サテツくんは頭を抱えて丸くなったのだった。


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