レム睡眠かノンレム睡眠だか区別がつかない

 沖縄の梅雨にも、本州と同じくらいの冷え込みがあるのか。急激にドンッと気圧が下がった。低気圧である。作業もまったく進まない。一旦ベッドに入って、波が引くのを待つ。まったく引かない。やけにリアルな夢だ。あっ、新規イベント? 興味がある。詳細を確認しなきゃ。画像をクリックしようとしたところで、これが夢だと気付いた。ノンレムからレムへの波が強すぎる。どうにか瞼を抉じ開けようとすると、電話が入っていることに気付く。着信が長い。手探りでスマホを探し、通話ボタンを押す。「ふぁい」と寝惚けた頭でどうにかいうと、担当じゃなかった。薫である。開口一番、私の名を呼んだ。クエスチョンマークが付いている。
『寝てたのか?』
 その問いには「正解」としかいいようがない。重く瞬きをする。薫の向こうから「寝てたのか?」と虎次郎が聞き返して来た。「そうである」としかいえない。ホテル品質の枕に顔を埋める。今日はもう、お開きとしかいえない。
「寝てたよ」
 一言だけ返せば、返事がない。おい、返せよ。また、うとうとと脳が睡眠に戻る。あー、もしかしてノンレム睡眠に片足突っ込んでたのかな、アレ。だからこうも頭が起きないと。『寝てたのか』と薫がようやく口を開く。なんなんだ、今の間は。なにか起きたのか「あっ!」と薫の驚く声が聞こえた。それは次第に遠くなって、代わりに遠くに聞こえた声が近くなる。
『具合でも悪いのか? なにか差し入れでも作って持っていくか?』
「いい。冷凍庫にはまだありそうだし」
『おい!! 筋肉ゴリラ! さっさとスマホを返せ!!』
『うるっせぇなぁ! お前が気の利いた一言もいわないからじゃねぇか!! この陰湿眼鏡ッ!』
 まぁた喧嘩が始まった。それでも声が遠いのは、こちらの耳を気遣ってくれたからか。(それにしても)見たいな、実際に二人が喧嘩している姿は。実をいうと、そこまで嫌ではない。こうもいつものように、天丼のように行われても、どのように言い返すかが楽しみな部分ではあった。一種の恒例である。ないと調子を崩すとか、そういう感じで。ふぁっと欠伸をする。電話を聞きながら眠りに戻ったら「おい!?」と薫の驚く声が聞こえる。どうやら、先着は薫のようだ。「おい!」ともう一度呼び掛けながら、私の名前を呼んでいる。大丈夫、大丈夫。ちゃんと聞いてるから。聞いてる、聞いてる。なんか、そのときの二人の様子が見えた。

 ──スマホから耳を離し、なにか話している。
 「だめだ。寝てしまった」
 「寝てるところをかけたからじゃねぇのか」
  と虎次郎が呆れ、ダメ出しをしている。それで薫が喧嘩を買った──。

 なんかそういう感じに思えた。それだけ。


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