ハグ待ち(じょ)

 店は休店日であり、昨日はSがあった。今日一日が予定の空いている日だからか、南城は遅くまで寝ていた。毎朝仕込みのために起きる時間も過ぎている。別室で寝ていた恋人は先に起き、簡単な朝食を用意した。オーナーシェフの南城ほどではないが、食べるには充分である。熟睡する南城の部屋に入る。カーテンを開け、太陽光を取り入れた。頭まで布団を被っているものだから、南城の身体に届かない。流石に昼過ぎまでは不味いだろう。恋人は南城を隠す布団に手をかける。剥ぎ取ろうとした瞬間、バッと布団自らが起きた。見れば、南城が腕を広げている。寝たままだが恋人のハグを待っていた。それを恋人はジト目で見る。ハグもない、キスもない。南城は眉を下げた。「なんだよ」と悲しそうな声も出す。それに意地悪をしすぎたかと思い、恋人は南城に近付いた。全身で要求する南城に応え、抱き締める。大きい背中に腕を回し、ギュッと抱き締める。満足そうだが、まだ足りないようだ。南城が恋人の背中に手を回さない。これを見て、次の要求に応えた。チュッと眉の辺りにキスを落とす。まだ足りないらしい。今度は目元、頬。それでも足りないらしく口元に落とす。それで南城も折れたのか、恋人の背中に手を回す。頭を引き寄せ、口に吸い付いた。目覚めのキスを強請る。鈍く口を開けて、恋人からのキスを待つ。それに応えて、恋人はもう一つキスを落とした。


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