邪魔が入った話(ちぇ)

 ちんすこうっていうのは、名前の割に乾燥している。しっとりとした食感ではなく、サクッとした食感だ。「これを茶請けに持ってくるとは」と薫は呆れているが、私にとっては珍しい。「本州じゃ食べられないから。滅多に」と郷土ネタを持ち出して黙らせた。サクッと食べる。薫も封を開いて、ちんすこうを食べ始めた。サクッと隣で食べる音が聞こえる。「薫、食べ飽きてる?」と聞いたら「まぁな」だ。「家に帰ると、毎回テーブルの上に置いてある」「へぇ。家庭のオヤツ?」「家庭に依るだろう」そう自信満々にいわれてもな。私は沖縄の人間じゃないから、わからない。
 サクッと食べる。ちんすこうの味は軽い。
「薫の家の、書庵?」
「なんだ」
 そうムスッとされてもな。眉を吊り上げているものだから、眉間に皺を寄せている。
「家に使ってる食器とか陶器って、この通りに売られているものを使っている?」
「まぁ、窯元が集まる通りだ。自然と目に付く。買っても不思議ではないな」
「ふぅん」
 否定はしないと。でも、他にも買っていそうだな。他のところでも。「でも、利便性はいいんでしょ?」「近くだからな」やっぱり、買ったりはしているらしい。サクッともう一つ食べる。手元からなくなったから、もう一個取り出した。ただ、薫の休憩時間に一緒に軽食を取るだけである。食べるものは、日によってバラバラ。今日は私の買ってきたちんすこうで、薫の家にあった茶葉で入れたお茶だ。封を開けて、一口で食べる。サクッとした食感を楽しんでいたら、薫が手を伸ばしてきた。なにか、付いてたっけ? 自分で口元を触れば、ちんすこうのカス。(あっ、これか)納得すると、グッと頭を引き寄せられた。強引に胸元に抱き寄せられて、引き寄せられる。
「あ、あの。薫、さん?」
 思わず敬語になってしまう。咄嗟に触った太腿から手を離す。(か、固い)柔らかいけど、固い。多分これは、筋肉のせいだろう。どぎまぎしているのに、薫は一向に離そうとしない。グッ、と肩ごと引き寄せて、顔を正面に戻した。あの、ちょっと?
「チェリー、いるー?」
「数学で分からないところがあるから、教えて」
「ついでに充電させてよ、チェリー」
「帰れ!! 俺は暇じゃないんだ!」
 暦とランガとミヤの声が聞こえた。しかしながら、この様子だと連絡もなかったんだろう。三人は玄関から来たらしいし、廊下に上がるんも時間の問題だろう。無断で上がるとすれば。「チェリー、上がっていいー?」「上がるなッ! ド阿呆ッ!!」(なにも子ども相手に、そこまで怒鳴らなくていいものを)ギュッと抱き寄せる力を増されては、どうしようもなかった。


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