「おにーさん、何飲みたい?」
キッチンから声がした。甘いのがいい、といえば、りょーかいと少し間延びした返事が返ってきた。





実は先ほどの彼女のマンションにいたりする。あの時意識朦朧していたとはいえ、初対面の俺の唇を奪ったかと思えば、「あ、ごめん。君かわいいからさ」とけろっとした顔で謝るから俺もなんとも言えない。その上、「これからうちで飲まない?」だなんて。絶対こいつ反省してないなと思うも、身体はもちろん正直で、結局のこのこついて来てしまった訳だ。



「はい、どーぞ」
と両手を塞いでキッチンから出てきた女は、その一つを俺に渡した。どうも、といいながら受け取り、グラスに口をつければ、甘くてフルーティーな風味が口に広がった。


「うま、これ何?」

「あ、美味しい?実家から送られてきた苺ジュースで適当に割っただけなんだけど」
と彼女は俺の隣で笑いつつ、少し不器用にビール缶を開けた。そして、小さな口でぐいぐいビールを気持ちいいくらいに飲み干す。









「ていうか、何でプラプラしてたの?」


そりゃあこっちのセリフだと思うも、これまでのことを話したら、そりゃあ災難だったねと口先ばかりで、女はけらけら笑った。頬はすでに赤く染まっている。


「おにーさんは今いないの?」

「そういうおねーさんは、どうなんだよ。初対面にいきなりキスとか、溜まってんじゃねえの?」
と先ほどから自分を語らない女に少し意地悪すれば、そうかもねえと受け流された。あー、何だこれ。大人の余裕を見せつけられた気がする。


そしてふんふんと隣でうなづく声がしたかと思いきや、ひんやりした彼女の両手にはさまれ、彼女が覆いかぶさる。あれ、これって襲われる?と初めてのことに戸惑いつつも、彼女の舌を受け入れた。