この痛みが美しくなる頃にも | ナノ




銀時が怪我をして帰ってきた。それも大層なもので出血が酷い。ここ数日は安静だな、と救護しながらぼんやりと思った。



それから暫くした後、高杉が戻っていないと騒ぎとなる。高杉さんと言えば、また相当の剣術を持ち合わせており、ここでの主戦力のひとりである。そんな人が帰って来ないとは、やはり事態は緊迫しているんだと現場にいない私でも理解できた。



少し待った、いや暫く待った。それでも、彼は戻ってこなかった。そして、だんだんとみんなの口数は減っていった。








「名前、」

銀時がぼそっと呟いた声が聞こえた。銀時の方をみると、銀時はただぼうっと上だけを見ていた。


「俺、ちょっくら行ってくるわ」

先ほどから予期していたことが当たった。覚悟していたはずなのに、やっぱり実際に言われると受け入れ難いものだった。でも、私が何と言おうと多分銀時は行くだろう。だから、私はただうん、と返事した。



そんな私に対して銀時は上半身を上げ、痛々しく包帯が巻かれた右手で私の頬を優しく撫でた。そして、そのまま引き寄せられ軽く唇を押し当てられた。





「んじゃァ、ヅラいくぞ」

銀時は先ほどのことなどなかったかのようにさらりと立ち上がった。


「ったく、待たせおって」

そして、何処から出てきたのやらこたちゃんも立ち上がる。そして、他の兵士も次々に続いた。
















いくら経っただろうか。蝋燭はとっくのとうに消え、外はぼんやりと薄暗闇となっていた。何故か、必死の形相で桂が私を揺らす。これは、夢?それにしては、痛い。桂、痛いって。もう、分かったから。だから、




「名前、起きてくれ。頼む、」

夢、じゃない、夢じゃないんだ。


「こた、ちゃん、」

「名前、やっと起きたか、」

桂は少し安堵した様子だったが、すぐに顔を引き締めた。私はそのことに妙な違和感を感じぞくりとした。


「ね、ねえ」

「いや、銀時は今のところ大丈夫だ。ただ、まずいことになった。ここが敵に漏れたらしい。ここが襲撃されるのも時間の問題だ。いいか、名前落ち着いて聞いてくれ。今からすぐにここにいる女達を起こし、荷造りしてさっさとここを離れるんだ。いいな」


まだ寝ぼけた脳を必死に使い、桂の言葉を理解する。


「ちょっと待って。それじゃあ、桂達は、」

「俺達は俺達で何とかする」

何とかするというのはどういうことなのか。何とか出来なかったらどうなるのか。


「頼む。聞いてくれ。これは、銀時が言い出したことだ」













それからは大変だった。少ない女ながらも、多少は意見が食い違った。が、それは男達が自分達に与えてくれた使命と理解すると、仕方なしに荷造りを始めた。キミちゃんは終始泣いていた。


まるで子供のようにわんわん泣くキミちゃんを引き連れて、私達は小屋を出た。立派に立てられたものだと思っていた建物は、こう冷静に遠くから見てみると案外ぼろくさいもので自分達はよくもこんなところに住んでいたものだと思った。


キミちゃんはいつの間にか泣き止んでいた。夕刻には、うち、強くなっちょる。名前ちゃん、見ててや。と笑って豪語するくらいになっていた。
























「どうした、総悟。さっきから遠くを見て」

「いや、ちょっと女の笑い声が聞こえたみたいなんですが、気のせいだったみたいでさァ」

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