この痛みが美しくなる頃にも | ナノ




風邪の流行も一時期よりはかなり落ち着いていた。まあ、かといって戦時中の身。生活が楽になる訳ではないが、一応一段落ついたことはついたのだ。


寒い日が続いていたにも関わらず、久しぶりに春のような暖かい日だった。私はひとり、よく日に当たる部屋で午前中に洗濯した鉢巻のほつれを補修していた。





「名前ちゃん」

単純な作業だったが意外に集中していたようだ。人が入ってきたのにも関わらず、全く気づかなかった。イヨちゃんとキミちゃんは目を三日月のようにして、妙な雰囲気でこちらを見ていた。


「どうしたの?」


やあねえ、名前ちゃんたら。と、キミちゃんはぐわんぐわん肩を揺らす。一応今針扱ってるから、危ないんだけどという私の言葉は丸無視だ。


「白夜叉とできてるんなんて。名前ちゃん、あんたもすました顔してるわりにようやってくれるわ」


もう水くさいっちゅうね、とイヨちゃんは高らかに笑う。


よくよく2人の話をきいてみると、昨日私が野草を摘みにいった所を彼が通りかかり少々言葉を交わしているのを2人は見かけて何をもってか内密の逢い引きとか訳の分からない勘違いをしているらしい。


単なる偶然と言うと、んなことない、とまるで当事者のような口ぶりでイヨちゃんは言う。


白夜叉はいっつも何かあると名前ちゃんとこよういく、と言う。ええ、そうなん?とキミちゃんものった。


雑炊配るときも名前ちゃんの方、衣駄目にしたときも名前ちゃんにいうし、なあ?と言われる。しかし、雑炊配るのはたまたま私の所が空いてただけで、裁縫持ちかけてくるのもたまたまそこに私がいたからのではないかと思ってしまう。



愛されてんな、とキミちゃんは言う。だから、どれもこれも偶々だと言い放ったら、偶然が続いたら必然や、と言い返されてしまった。


そうや。キミちゃん言うとおりや。それにな、そんな顔で否定しちょっても全然説得力ないんわ。と言われ、私はその後二人に冷やかされるばかりで、何も言い返せなかった。

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