ある程度のことが片付いた夕暮れ時、副長が呼んでいると山崎に言われた。この時間に呼ばれることといえば、あれのことでしかなく、少し憂鬱な気持ちになった。しかし、行かない訳にもいかず渋々副長部屋へと向かった。


「そろそろ連れ帰ってきてこい」
副長の言い方はもはや動物を扱うような命令だった。それに対して私は、はいと小さく返事をした。いつもすまねえな、と土方は言うが、そういうならその口に咥えた忌々しい煙の源を取っ払って下さいとも言えず、じゃあいってきますと言って席を立った。

カラスの鳴き声に、子供達の叫び声。それに、橙色の空があいまって今日の終わりを告げる。面倒だと思いながらも、歌舞伎町に向かう足取りは軽かった。

志村道場に着けば、案の定妙のサウンドバッグと成り果てた近藤がいた。


「お妙さん、今日はもうこの辺でかんべんしてください。一応、うちの局長なもんで」

「あら、苗字さん。それじゃあ真選組ではストーカーを認めているととっていいのですか」

と和やかに笑う妙だが、今現在も妙の4の字固めは続いている。だが、近藤の方がひとつ上で、苦し紛れにもかかわらず、ご満悦のようだ。これじゃあ、私の立場がない。というものの、説得をやめるわけにもいかない。


「けして、そういうわけではないんです。ただ、局長は少し不器用でして」

「不器用ならストーカーでもセクハラでもしていいんでしょうか」

「だから、こちらとしてはそのようなことを申し上げたいわけではなく、」

一言でいえば面倒である。近藤も悪い、というか近藤が悪い。にもかかわらず、上司を連れ戻さない訳にもいかない。その上、妙は頭のきれる女だから、うまく丸め込むなんてありゃしない。このままでは妙に乗せられるそう思った時だった。縁側に見慣れたアイマスクを見つけたのは。

「おき、た?」

ああ、だからいつもの駄菓子屋にいなかったのかと合点がいった。

「と、とにかく、今日ご勘弁願います」

沖田がいることに少しだけ動揺したのか、私は無意識にさっと土下座をして深々と頭を下げていた。

妙もそれには少し驚いたのか、力をほんの一瞬弱める。その隙に局長を救出し、沖田にげんこつひとつ入れて、帰るよ、と有無を言わさず無理やり手を引き、音速で道場を抜け出した。

ボロボロの雑巾となった近藤に、沖田を引くのはどうしようも無く大変だった。沖田は後ろで、いいところだったのに、と舌打ちするが聞かないふりをする。

「ああ、苗字のせいで腕がもげまさァ」

何で志村家にいたの、とか何で最近微妙に私のこと避けるの、とか色々私は悩んでいるのに。私の気も知らないで、呑気なことを言ってる沖田なんて知らない。

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