「名前さん、今日元気ないでさァ」
昼下がり。アイマスクをつけて、休憩?をとる沖田さんが言った。どきり。
「そんなもの付けてるのに、分かるわけがないでしょう」
自分の落ち込んでいるのを悟られるのは営業失格だと思い、はぐらかした。大丈夫。
「余計なものが見えなくて、案外いいんですぜィ」
沖田さんは、むくりと起き上がりアイマスクをずらした。くすりと笑われ、この人には敵わないな。と心の内で白旗を挙げた。
「名前さんが元気ないなんて珍しいでさァ。どうしたんですかィ?」
こんな十代の年下に心配されるなんて、私もまだまだだなと思う。
「そんなもたいしたことでもないの。だから、私は大丈夫」
そんなもんですかねィと沖田くんは、少し納得してないが多分大丈夫なのは大丈夫なのだ。私は昔からそういう風にやってきたにだから。自分を少し落ち着かせると、何だか向かってくる騒がしい音に気づいた。
「総悟!好い加減にしろ。また、サボりやがって」
「俺は、ちょこっと名前さんとお話してただけでさァ」
「それサボりだから!つうか、また名前に迷惑かけやがって。すまなかったな、名前」
「いえいえ、そんなことはありません」
土方さんも毎回大変だな。でも、いちいち吹っ飛んでくるくらいだもん。沖田さん大切にされてるな。
「ほら、帰るぞ」
「チッ、死ね土方。自分が本当は名前さんに会いたいくせに」
「はっ、んんんんなわけねぇーだろ!オイ、総悟しょっぴくぞ」
「ヘタレトッシー」
「その名前で呼ぶんじゃねえ!」
何だかよくわからないが、段々と過激になっているのは気のせいじゃないと思う。バズーカに刀だなんてちょっと物騒ですよと2人を止めようとしたら、運悪く土方さんの肘が当たってしまった。そのまま、バランスを崩してやばい、と思ったところにぐいっと手をひかれなんとか持ち直した。
ぐしゃり。鈍い音がする。足元をみれば、今日の朝髪につけてきたはずの簪が無残な姿にあった。
「悪い、」
土方さんの顔が覇気を無くしたように、酷いものになっていた。踏んづけたのは私自身。
「そんな顔なさらないで下さい。元々、私の不注意ですから」
さようなら。さようなら。